
男性に見られる薄毛のことを男性型脱毛症などと呼びますが、この男性型脱毛症は、遺伝することが分かっています。ただ、親が薄毛だからと言って、子供も必ず薄毛になるという訳ではありません。
では、遺伝によって薄毛になってしまう確率はどれくらいなのでしょうか。また、遺伝以外の要因としてはどのようなことがあげられているのでしょうか。薄毛になるメカニズムとあわせて紹介したいと思います。
薄毛が子供に遺伝する確率は?
それでは早速ですが、みなさんがもっとも知りたいであろう、遺伝によって薄毛になる確率について紹介したいと思います。結論から言うと、遺伝によって薄毛になる人は、薄毛全体からみると4分の1程度だということです。
この数字を見て、遺伝によって薄毛になる確率が高いと感じるか低いと感じるかは人それぞれだと思います。ただ、確実に言えることは、薄毛になる原因の大半は遺伝以外にあるということです。
薄毛が起こるメカニズム
なぜ遺伝によって薄毛になってしまうかを解説する前に、そもそもなぜ薄毛が起こってしまうのか、そのメカニズムについて知っておく必要があります。それによって、薄毛の原因が遺伝なのかどうか、判断する材料となります。
男性ホルモンが旺盛になる
男性に見られる薄毛の場合、男性ホルモンが旺盛になりすぎることが要因であると考えられています。男性が男性らしくあるためのホルモンとして、テストステロンといわれる物質があります。
テストステロンには、筋肉を作ったり骨を成長させたり、精子を生みだしたり髪の毛を作りだしたりする働きがあり、男性にとって欠かせないものとなっています。
ちなみに、男性ホルモンというと男性にしか分泌されないようなイメージがあるかもしれませんが、女性であっても副腎や卵巣からテストステロンが分泌されています。
男性ほどではなにしても、女性にもがっしりとした体つきの人はいますし、性的な衝動にかられる人もいます。それはテストステロンが関与しているからだという考えもあるのです。
ただし、女性に分泌されるテストステロンの量は、男性の10分の1から20分の1とされています。話を男性に見られる薄毛に戻します。
男性が薄毛になる原因として、男性ホルモンであるテストステロンが、より強力な男性ホルモンであるジヒドロテストステロンへと変化することがあげられています。
ジヒドロテストステロンには、毛母細胞の細胞分裂を妨げる働きがあり、それによって髪の毛の生え換わる周期に異常が生じ、結果として薄毛になってしまうという訳なのです。
5αリダクターゼの分泌量が多い
男性が薄毛になってしまうのは、テストステロンがより強力な男性ホルモンであるジヒドロテストステロンになってしまうのが原因だということでした。
そして、テストステロンがジヒドロテストステロンへと変化する際に重要な働きをするのが、5α-リダクターゼと呼ばれる変換酵素です。
そのため、もともと5α-リダクターゼの分泌量が多い場合、ジヒドロテストステロンの産生量も多くなる可能性が高くなり、それによって薄毛になるリスクも高くなるのです。
薄毛が子供に遺伝する仕組み
遺伝によって薄毛になる可能性は薄毛全体でみた場合、4分の1程度だということでした。では、遺伝によって薄毛になる仕組みはどうなっているのでしょうか。
アンドロゲンレセプターの感受性が高い
薄毛が子供に遺伝してしまう要因として、アンドロゲンレセプターの感受性が高いということがあげられています。アンドロゲンレセプターというとなんだか難しく感じますが、日本語にすると男性ホルモンの受容体ということになります。
つまり、薄毛の原因となるジヒドロテストステロンが、アンドロゲンレセプターに反応することによって、髪の毛が抜けやすくなってしまうという訳なのです。
そして、アンドロゲンレセプターの感受性は人によってさまざまです。特に、アンドロゲンレセプターの感受性が高い人の場合、ジヒドロテストステロンを感知して薄毛になりやすくなってしまうのです。
遺伝的に薄毛になりやすい人の場合、親から子供へとアンドロゲンレセプターの感受性も受け継がれている可能性があるということです。
5α-リダクターゼの分泌量が遺伝
男性ホルモンであるテストステロンがより強力な男性ホルモンであるジヒドロテストステロンへと変化することも、薄毛になってしまう要因だということでした。
テストステロンがジヒドロテストステロンへと変化する際に、重要な働きをするのが5α-リダクターゼと言われる変換酵素ですが、実は、5α-リダクターゼの分泌量も遺伝によって受け継がれることがあるということなのです。
5α-リダクターゼには1型の5α-リダクターゼと、2型の5α-リダクターゼがあり、1型の5α-リダクターゼは全身および、後頭部と側頭部の皮脂腺に多く分泌しています。
一方、2型の5α-リダクターゼは、前頭部や後頭部などの毛乳頭に多く存在していることが分かっています。そのため、2型の5α-リダクターゼの分泌量が遺伝的に多い場合、M字ハゲやO字ハゲになってしまうリスクが高くなるのです。
遺伝以外の薄毛の要因を教えて!
ハゲというと遺伝というイメージをお持ちの方も多いと思いますが、実際には、遺伝によって薄毛になる確率は4分の1程度だということでした。では、遺伝以外にはどのような要因で薄毛になってしまうのでしょうか。
生活習慣
疲労や睡眠不足の蓄積などによって、身体の回復機能が低下していると、新陳代謝が滞ってしまい、結果として薄毛になるリスクが高くなってしまいます。
特に、睡眠不足が続いてしまうと睡眠の質が低下し、毛母細胞の細胞分裂にも悪影響を及ぼすこととなります。
ストレス
ストレスは万病の元などと言われますが、薄毛にとってもストレスは大敵です。なぜストレスが万病の元といわれるかというと、ストレスの蓄積によって自律神経のバランスが乱れるからです。
自律神経とは私たちの身体のアクセルとブレーキのようなもので、日中はアクセルを踏んで、夜になるとブレーキを踏むというのが正常な働きとなっています。
ところが、長時間のデスクワークや人間関係の悩み、仕事上のトラブルや家庭内の不和など、さまざまな精神的・身体的ストレスによって、アクセルを踏みっぱなしになってしまうのです。
夜になってもアクセルを踏みっぱなしでいると、睡眠の質が低下し、身体の回復機能や新陳代謝を妨げることとなってしまうのです。
自律神経は私たちの身体の健康を司っているため、自律神経のバランスが乱れるとさまざまな場所にトラブルが起こります。
特に、自律神経のバランスが乱れると、粘膜系が最初にやられることが分かっています。春先に花粉症が出やすいのは、自律神経のバランスが乱れやすいからなのです。
また、自律神経のバランスが乱れたことによってアクセルを踏んだ状態になると、血管が収縮して血行が悪くなることが分かっています。
血液は全身に酸素と栄養を運んでいるので、結構が悪くなった場所は栄養状態が低下することとなります。もし頭皮の栄養状態が低下したなら、髪の毛が成長するのを妨げたり、抜け毛が増えたりする結果となる訳なのです。
紫外線
私たちの身体は衣服によって守られていますが、頭部というのは帽子でもかぶらない限り紫外線にさらされることとなります。
紫外線が有害物質であることはいまさら説明する必要もないと思いますが、紫外線に頭皮がさらされると、頭部の皮脂が酸化してしまいます。酸化=老化ですから、それによって薄毛のリスクが高くなるのです。
食習慣
脂っこい食べ物ばかり食べていたり、甘いものを食べ過ぎたり、栄養価の低い食事を続けたりすることによって、薄毛になる可能性が高くなることが分かっています。
私たちの身体は食べ物からできているので、悪い食べ物を摂取すれば、毛髪や頭皮にも悪い影響を与えるという訳なのです。
子供に薄毛が遺伝するのを予防できる?
薄毛全体の4分の1程度が遺伝によるということでしたが、遺伝による薄毛は防ぐことができないのでしょうか。
実は、最近になって薄毛を専門にしている病院やクリニックなどで、アンドロゲンレセプター遺伝子の検査をおこなうことで、男性型脱毛症になりやすいかどうかを調べることができるようになっています。
ただし、まだ研究途上の検査のようで、信憑性が高いとまでは言えないようです。男性型脱毛症の治療薬として、フィナステリドと呼ばれる有効成分を含むものがありますが、その薬が効きやすいかどうかといった判断くらいは可能なようです。
ただし、男性型脱毛症の治療薬は、原則として成人の服用のみが認められています。未成年の場合、その他の薄毛になる要因を防ぐことが現実的だと言えます。
薄毛の予防法
遺伝が原因の男性型脱毛症であっても、その他のリスクファクターを取り除くことで、薄毛の進行を遅らせることは可能ですし、全体の4分の3の薄毛は、遺伝以外が原因とされています。では、薄毛はどのようにして予防するとよいのでしょう。
食習慣の改善
薄毛になる原因として5α-リダクターゼの分泌量が多いということがあげられていましたが、5α-リダクターゼの分泌量を抑える食品として、亜鉛があげられています。
亜鉛はカキやレバー、牛肉やシジミなどに多く含まれています。また、女性ホルモンと似た働きをするイソフラボンを摂取することも、5α-リダクターゼの働きを阻害するのに効果的だとされています。
ストレスをため込まない
ストレスは万病の元といわれるように、薄毛にとってもよい影響は与えません。なるべく早寝や早起きをして、適度に身体を動かし、ときには遊びに出掛けるなどしてストレスをため込まないようにしましょう。
薄毛が子供に遺伝する確率は25%程度です
今回は、薄毛が子供に遺伝する確率について見てきましたが、いかがだったでしょうか。意外と低いと感じた方も多いのではないでしょうか。
普段の生活習慣を見直すことで、薄毛が予防できるということが分かっただけでも、明るい材料だと言えるのではないでしょうか。