
自分の薄毛が気になりだしてきた人は、心のどこかでは不安に思いつつも「まだ大丈夫」と心のどこかで思っていませんか?
薄毛は初期症状で処置することが非常に大切です。一度抜けてしまって髪の毛が生えてこなくなった毛根から再び髪の毛を生えるように治療することに比べ、弱ってき毛根を復活させる方が、難易度は格段に低いのです。
インターネットなどに掲載されている薄毛の原因は、調べれば様々なものがありますが、実際問題、本当に薄毛の原因について詳しく解説されている記事は少ないのが現状です。
この記事では、薄毛の本当の原因について解説していきます。また.その原因を元にして、正しい薄毛の治療方法もご紹介します。
1.薄毛の種類とそれぞれの原因
髪の毛が薄くなるということは、毛根に何らかのトラブルが発生しているということです。そして、そのトラブルにはいくつかの種類があります。30代以降の多くの男性が悩まされるのは「男性型脱毛症」いわゆるAGAですが、その他にもいくつかの薄毛の原因となる頭皮のトラブルがあります。ここでは、その様々な薄毛の種類をご紹介します。
男性型脱毛症
男性型脱毛症は、AGAともいわれ、30代を過ぎた男性によく見られる、最も多いタイプの薄毛の原因です。前頭部や頭頂部から薄毛が進行してくることが特徴になります。
薄毛=AGAと言っても過言ではないほど、割合的には多いものです。男性型脱毛症の原因は「ジヒドロテストステロン」という悪玉ホルモンです。
このジヒドロテストステロンは、男性ホルモンである「テストステロン」と、還元酵素である「5αリダクターゼ」が結びつくことによって生まれます。男性ホルモンが多い人はハゲやすいというのは、テストステロンの量が多いことが理由でジヒドロテストステロンの発生がしやすいということからそう言われているのです。
そして、そのジヒドロテストステロンが、前頭部や頭頂部に分布しているアンドロゲンレセプターというホルモン受容体に受容されることにより、本来であれは「髪の毛を成長させなさい」という信号を出す毛乳頭から「髪の毛を抜きなさい」という信号を発生させるという作用をもたらします。
そのために薄毛になってしまうのです。つまり、ほとんどの人の薄毛のことを指すこの男性型脱毛症を止めるためには、ジヒドロテストステロンをいかにして発生させないようにするか、というのがポイントになります。薄毛に悩まされている方の原因のほとんどはこの男性型脱毛症ですので、詳しくは後ほど解説していきます。
円形脱毛症
円形脱毛症は、円形や楕円形に髪の毛が抜けていき、その部分がハゲになってしまうという病気です。10円玉程度の大きさのものを円形脱毛症と呼びますが、それが複数発生したり、頭髪全体に拡大する可能性もあります。これが悪化し、頭髪全体が抜けてしまうことを全頭脱毛症とも呼びます。
これは男性型脱毛症のように、ある年齢になると発症するというものではありあません。年齢に関係なく、10代の若い方にも起こる可能性があります。
円形脱毛症の原因には様々な説が提唱されていますが、ストレスや生活習慣の乱れが根本の原因であることが明らかになっています。その他にも、免疫の異常やアトピー、遺伝など、様々な要素が絡み円形脱毛症が起こります。これは一般的に「ハゲ」と呼ばれるものとは少し事情が異なり、育毛剤を使ったり、AGAの治療薬を使用したとしても、改善されることはありません。
根本の原因となっている、ストレスや生活習慣を改善させなければ治療することは難しい病気です。
FAGA
AGAは、男性型脱毛症のことを指します。FAGAとは、女性に起こるAGAのことです。実は、女性の体の中にも男性ホルモンが存在しています。つまり、女性の体内でもAGAの原因であるジヒドロテストステロンは生成され、同じシステムで薄毛になってしまう可能性はあるのです。
しかし、症状としては男性型脱毛症のように前頭部や頭頂部から薄毛が進行するのではなく、毛髪全体が徐々に薄くなっていくという特徴を持ちます。この理由は女性ホルモンの分泌量の違いによるものです。
女性は、もちろん女性ホルモンが多く分泌されています。女性ホルモンは髪の毛を成長させる働きがあり、ヘアサイクルと呼ばれる、髪の毛の成長サイクルの期間を長くする働きがあるので、脱毛症が進行したとしても、そのスピードは非常に緩やかで、男性のように一気に進行するということは少ないです。
ただし、女性ホルモンの分泌は、年を重ねるとともに減少していきます。平均すると35歳前後から女性ホルモンは減少していくといわれています。そのため、男性ホルモンの影響が強まり、FAGAが発症しやすくなるのです。
しかし、減少したとしても一定の割合で女性ホルモンの分泌が続くので、そこまで大きな薄毛の問題に発展することは少ないです。簡単に言えばFAGAの原因とは、ホルモンバランスの乱れということになります。
抜毛症
抜毛症とは、自分の体毛を自分で引き抜いてしまうという癖を持つ行動障害のことです。髪の毛だけではなく眉毛や睫毛、ヒゲ、手足の毛など、抜毛症の対象は全ての体毛におよびます。
無意識のうちに毛を抜いてしまうという場合もありますし、自分でも分かっていながら抜くのをやめられないというケースもあります。これは、自然に髪の毛が抜けてしまうわけではなく、自分の行動によることなので、精神疾患の一つです。中には毛を抜きたくなる衝動が強くなりすぎて、他のことには手がつけられなくなり、ひたすら毛を抜くことに集中してしまう場合もあります。
発症するのは小学校の高学年から高校生ぐらいまでの思春期の時期に多く、年齢が上がるにつれて自然に治っていく方も多いです。これまでには女性に多く見られる症状でしたが、最近では男性にもこの症状が見られるケースが増えています。非常に稀なケースですが、この抜毛症に何十年も悩まされている方もいます。
この抜毛症は、過去には強迫性障害の一種と分類されていましたが、現在ではBFRBSという、体に対する反復的行動との一種だとされています。これは、爪を噛んだり、唇を噛んだり、口の中を噛んだりといった無意識の行動の延長線上にあるということです。
抜毛症が原因で薄毛になってしまった場合、毛根に異常があるわけではありませんので、育毛剤を使用したり、クリニックへ通院したり、病院の皮膚科へ行ったりしても効果はありません。その治療よって髪の毛の新たに生えたり、髪の毛の成長スピードが上がったとしても、すぐまた自分で抜いてしまうからです。根本的に解決するには精神的な問題を取り除く必要があります。
2.男性型脱毛症のメカニズム
男性型脱毛症は、薄毛に悩まされている方のほとんどの原因です。そこでここでは、男性型脱毛症のメカニズムについて詳しく解説していきます。
ジヒドロテストステロン
前の項目でお伝えした通り、男性型脱毛症の原因はこのジヒドロテストステロンという悪玉ホルモンです。男性ホルモンであるテストステロンと、5αリダクターゼが結合することによってジヒドロテストステロンは生まれます。
テストステロンは、正常な男性であれば分泌されるホルモンで、筋肉の成長促進など、体にとって必要な役割を持つものなので、テストステロンの生成量を抑制することはあまり望ましくありません。
そのため、ジヒドロテストステロンの生成を抑制するのであれば、テストステロンではなく、5αリダクターゼの方を抑制する必要があります。
現在のAGA治療で広く使われているプロペシアという薬品は、5αリダクターゼの活動を阻害するフィナステリドという成分を配合しています。
このプロペシアは、認可されると日本国内でたちまち広がり、これまで「気休め」程度にしか思われていなかった育毛剤の認識を大きく変えました。プロペシアが現在の育毛業界を取り巻く状況を作り上げたと言っても過言ではないでしょう。5αリダクターゼの抑制には、それだけ大きな働きがあるということです。
5αリダクターゼの働きを抑制することによって、ジヒドロテストステロンの生成量を抑えることができます。5αリダクターゼには、1型と2型というものが存在し、1型の5αリダクターゼは頭頂部に多く分布しており、2型の5αリダクターゼは前頭部に多く分布しています。薄毛を発生させる力が強いのは、2型の5αリダクターゼだといわれています。そのため、前頭部の薄毛が先に進行するケースが多いです。
つまり、いわゆる「M 字ハゲ」や「O字ハゲ」です。若い方にM 字ハゲが多いのは、この理由によるものです。
アンドロゲンレセプター
アンドロゲンレセプターは、ホルモンの受容体です。ジヒドロテストステロンを具体的に作用させる装置のようなものだと考えてください。
ジヒドロテストステロンがアンドロゲンレセプターに受容されると、アンドロゲンレセプターは毛乳頭細胞の核へ移動します。そして、毛乳頭細胞の中にあるDNAと結びつき、「TGFβ」という、細胞を死滅させる成長因子を発生させます。同じ顔に生えている毛でも、髪の毛は薄毛になるのに、ヒゲは薄毛にならないということが不思議に思った方はいませんか?
これは、髪の毛に存在するアンドロゲンレセプターは、毛乳頭細胞に移動した際に、「TGF β」を発生させ、ヒゲなどの毛乳頭細胞に存在するアンドロゲンレセプターは、毛乳頭細胞に移動した際に、「IGF1」という成長因子を発生させるためです。IGF1は細胞死を発生させずに、正常に毛が成長するシグナル発生させます。そのためにヒゲは抜けるというよりも、より太く濃くなるのです。
アンドロゲンレセプターには、感受性というものがあります。感受性というのは、ジヒドロテストステロンの影響をどのぐらい強く受けるかという指標になります。
AGAクリニックなどで、遺伝子検査を受ければ、自分のアンドロゲンレセプターの感受性を測定することができます。感受性が高ければ高いほどジヒドロテストステロンの影響を受けやすく、ハゲやすいと言えます。逆に、アンドロゲンレセプターの感受性が低ければ低いほど、ジヒドロテストステロンの影響を受けにくく、ハゲにくいと言われます。
薄毛は遺伝するか
よく男性型脱毛症は遺伝すると言われます。「父親がハゲているから自分のハゲるのではないか」と悩む方もいます。しかし、このアンドロゲンレセプターという観点から薄毛について考えると、父親がハゲてるからといってその子供もハゲるとは限りません。むしろそこに因果関係はないと考えられます。
なぜなら、アンドロゲンレセプターの感受性を示す遺伝子は、母親から受け継ぐX染色体に含まれているからです。さらに元をたどると母親のX染色体は、母親の父親つまり、母方の祖父から受け継がれているということになります。つまり、自分が薄毛になるかどうかを判断するためには、母方の祖父が薄毛であるかどうかを確認する必要があるということです。
薄毛は、確かに遺伝します。しかしその遺伝は「父親から息子へ」という単純な遺伝ではなく、「母方の祖父から孫へ」と隔世遺伝をするのです。
3.男性型脱毛症の治療方法
薄毛の原因が分かったところで、具体的な対策を立てていきましょう。男性型脱毛症は、大きな原因はジヒドロテストステロンとアンドロゲンレセプターです。その他様々な要素はありますが9割以上の原因はここにあります。
しかし、アンドロゲンレセプターの感受性は先天的に決まっており、変えることはできないので、ここではジヒドロテストステロンの抑制と発毛促進の2種類を軸にして解説していきます。
ジヒドロテストステロンの抑制
プロペシアの服用
現状で最も効果が高いであろう薄毛対策の方法がプロペシアの服用です。実際に、AGA治療専門のクリニックでの、治療の基本はこのプロペシアの服用です。
先ほども触れましたが、プロペシアの主成分であるフィナステリドには、5αリダクターゼの抑制作用があります。そのため、ジヒドロテストステロンの生成量が減り、薄毛が予防されるのです。
ただし、副作用の危険性が高く、男性機能の低下や、腎臓病などのリスクもあります。また、日本国内では医師の処方の上でなければ販売ができない薬品であるため、入手するためにはクリニックへ通院するか、病院の皮膚科へ通院する必要があります。
ノコギリヤシのサプリメントを服用
プロペシアが欲しいが病院には行きたくないという場合や、プロペシアの副作用が心配だという場合は、ノコギリヤシのサプリメントの摂取がお勧めです。
プロペシアほどではありませんが、ノコギリヤシにも5αリダクターゼの抑制作用があります。もともとは、インディアンが滋養強壮のために摂取していたノコギリヤシですが、「インディアンにハゲがいない」という事実から始まった研究の結果、このノコギリヤシに薄毛を抑制する成分が入っているということが分かりました。
ノコギリヤシ自体は、日本国内で入手するのは難しいですが、ノコギリヤシのサプリメントは通販やドラッグストアで販売されています。「薄毛予防」という目的ではなく、「頻尿予防」のサプリメントとして販売されている場合がほとんどです。
亜鉛を摂取
亜鉛には、5αリダクターゼを抑制する働きがあります。若干ですがジヒドロテストステロンの生成を抑制する働きがあります。また、髪の毛を構成するたんぱく質を作る働きもありますので、育毛を考えるなら積極的に摂取していきたい成分のひとつです。
しかし、現代人に不足しがちなミネラルの代表でもあるので、ファーストフードやカップラーメンなどが日々の食生活の中にあると、摂取量が減ってしまいます。
牡蠣に多く含まれているので、牡蠣を食べるチャンスがあれば積極的に食べると良いでしょう。効率よく摂取したい場合は、サプリメントで摂取するのも有効です。
発毛の促進
ミノキシジルの塗布
ミノキシジルという成分の配合された外用薬を頭皮に塗布するという方法が、現在のAGA治療の業界でスタンダードとされている発毛促進法です。
欧米のAGAクリニックでも、「プロペシアの服用とミノキシジルの塗布」というのが主流になっています。日本で恐らく最も有名な育毛剤である「リアップ」もミノキシジルが主成分の育毛剤です。
ちなみにこのミノキシジルは、厚生労働省が認可した育毛成分で、外用薬として認可されているものは、現在このミノキシジルのみです。認可の基準が厳しくなったという背景はありますが、それだけ効果に信頼性がある成分だと言えるでしょう。
ミノキシジルには、毛母細胞の活性化の作用と、毛包を大きくする作用があります。血行促進効果があると書いてあるサイトもありますが、それはミノキシジルがもともと血圧降下剤から生まれた育毛成分だったことから勘違いされて生まれた説で、実際にはミノキシジルに血行促進の効果はありません。
まとめ
育毛治療において大切なことは「原因をしっかりと把握し、それに応じた治療を行う」ということです。円形脱毛症の方に対して、男性型脱毛症の治療薬を使用しても意味は無いということです。
そして、最も気にしている方の数が多いであろう男性型脱毛症に関していえば、最も大きな原因はジヒドロテストステロンです。この生成を抑制するために、「プロペシア」の使用が効果的です。これだけでも薄毛予防の効果はありますが、さらに発毛効果を高めるために、同時に「ミノキシジル配合外用薬」を使用することがおすすめです。