
抜け毛というと男性型脱毛症(AGA)を想起しがちですが、女性にも抜け毛による薄毛が起こる可能性はあります。
女性の場合、女性特有の抜け毛原因があるのをご存知でしょうか?それぞれ抜け毛が起こる原因を理解することで今後の対処方法が見つかるかもしれません。
今日は女性の抜け毛の原因と対処法、また予防法などについて紹介します。
女性の抜け毛の原因はなに?
女性の抜け毛の原因はさまざまなことが考えられます。単に加齢によって髪の毛が抜けやすくなることもあれば、病気やアレルギーなどによって抜け毛が増えることもあります。それでは、女性の抜け毛の原因について見ていきましょう。
1.女性男性型脱毛症(FAGA)
壮年期や中年期の男性によく見られる薄毛のことをAGA(エージーエー:Androgenetic Alopecia)と言います。男性ホルモンが原因で抜け毛が起こったり、頭皮環境が悪化することによって薄毛が進行する症状のことです。
女性男性型脱毛症の原因とは?
女性特有の抜け毛の原因としては、女性男性型脱毛症(FAGA:Femaile Androgenetic Alopecia)があります。男性のように、局所がはげ上がるようなことはなく、全体的に髪のボリュームがダウンして、地肌が透けて見えるようになるのが特徴です。
通常は若い女性に見られることはあまりなく、中年期以降の女性に多くみられるということです。原因としては、女性ホルモンの分泌量が低下することが挙げられています。そのため、更年期に見られることが多くなるということです。
女性男性型脱毛症の治療法や予防法は?
男性型脱毛症の治療薬としては、フィナステリドやデュタステリドを有効成分として配合している医薬品が国から認可されていますが、男性ホルモンにアプローチすることを目的としているため、女性が使用することはできません。
もう一つ、国から発毛効果が認められている有効成分としてミノキシジルといわれるものがありますが、女性男性型脱毛症の治療には、ミノキシジルを有効成分として含んだ育毛剤などが用いられることとなります。
また、女性男性型脱毛症の原因としては、ホルモンバランスの乱れ以外にも、ストレスや生活習慣、食習慣なども関与してきます。ストレスは人間関係の悩みや家庭内のトラブルといった精神的なものだけではありません。
疲労や睡眠不足、暑さ寒さ、花粉やハウスダスト、たばこの煙や排気ガスなど、身体的な要素もストレスには含まれます。そのため、ストレスを適度に発散することも重要となります。
2.分娩後脱毛症
出産後の女性に、一時的に抜け毛が増えて髪の毛が薄くなるといった現象がみられることがあり、そのことを分娩後脱毛症と呼んでいます。分娩後脱毛症もやはり、女性ホルモンのバランスが乱れることによって起こるといわれています。
それに加えて育児ノイローゼなどのストレスがある場合、さらに抜け毛の量が増えることもあるそうです。ただ、女性男性型脱毛症や、この後に紹介する脱毛症と比べると、自然と回復する類の脱毛症なので、それほど心配することはないということです。
3.脂漏性脱毛症
脂漏性脱毛症とは、読んで字のごとく皮脂に分泌量が多いことによって、抜け毛が増えてしまう症状のことを言います。通常は、脂漏性脱毛症だけが見られることはあまりなく、脂漏性皮膚炎にともなって抜け毛が増えてくるということです。
脂漏性脱毛症の原因とは?
30代から40代の女性に多くみられる症状で、医療機関を受診しないとなかなか治らないということです。原因ははっきりとしておらず、遺伝の可能性もあれば、環境要因が絡んでくることもあるそうです。また、精神的なストレスによっても発症することがあるそうです。
最近では、マラセチアという真菌(カビ)の一種が原因となっているのではないかという考え方もあるそうです。マラセチアは皮脂を栄養源として繁殖することが分かっているので、皮脂の分に量が多いと脂漏性の脱毛症が起こりやすくなるそうです。
脂漏性脱毛症の治療法や予防法は?
脂漏性脱毛症の治療は、一般的に皮膚科を受診することとなります。治療薬としてはステロイド製剤が有効だということです。頭皮にはローションタイプのステロイド製剤を用いることが多いそうです。
また、脂漏性脱毛症の原因としては、マラセチアも挙げられているため、抗真菌薬が用いられることもあるそうです。あと、皮膚科の医師によると生活習慣の改善が重要で、それによって回復することも期待できるということです。
具体的には、脂漏部位を清潔に保つことと、食事や生活習慣に気をつけることです。脂漏部位を清潔の保つためには、1日2回の洗顔が奨められています。最近は、抗真菌薬を配合したシャンプーなどもあるそうなので、そういった商品を利用するのも一つの手です。
生活習慣も脂漏性脱毛症の原因となるそうなので、ビタミンとミネラルを多く含む食生活を意識して、睡眠時間をしっかりと確保し、適度な運動を心がけることも大事だということです。
4.牽引性脱毛症
牽引性脱毛症は読んで字のごとく、髪の毛が引っ張られることによって抜け毛が起きてしまうことを言います。男性にも見られますが、通常は髪の毛を結んでいる女性に多くみられる症状です。
牽引性脱毛症の原因とは?
ポニーテールやひっつめ髪など、いつも同じような髪形をしていると、引っ張られて部分の髪の毛が抜けやすくなってしまいます。ただ、1ヶ月や2か月同じ髪型をしていた程度では、牽引性脱毛症が起こることはないそうです。
もちろん、髪の毛を引っ張る強度や時間にもよるのですが、一般的には早くて5年から6年、長くて10年から20年にわたって同じ髪型をしていると、引っ張られた部分の髪の毛が抜けてしまい、髪の毛が生えてこなくなる可能性があるということです。
牽引性脱毛症の治療法や予防法は?
牽引性脱毛症は病気というわけではなくて、機械的刺激による脱毛症なので、まずは同じ髪型をやめることが重要です。髪を結わくときには圧力がかかる場所を変えるなど工夫をすることが大事です。
また、髪を結わえていない女性でも、毎日同じ分け目にしていると、その部分の髪の毛が薄くなってくることもあるそうです。イメチェンも兼ねて、たまには分け目を変えるようにするとよいでしょう。
5.円形脱毛症
円形脱毛症は、俗に「10円はげ」などといわれるように、頭皮にコイン大の大きさのはげができてしまう疾患のことを言います。ただ、1ヶ所のみにできるとは限らず、多数の10円はげができたり、頭全体の髪の毛が抜けてしまうこともあるということです。
円形脱毛症の原因とは?
原因は免疫系の異常によって、自分のリンパ球によって自分の毛包が破壊されることだといわれています。ただ、なぜ自分のリンパ球が毛包を攻撃するのかについては、はっきりとしたことが分かっていないそうです。
よく、10円はげというとストレスと関連付けて説明されることが多いのですが、実は、ストレスが決定的な原因というわけではないそうです。そのことは、円形脱毛症になる人の割合が国や社会情勢を問わず一定であることが証左となっています。
円形脱毛症の治療法や予防法は?
円形脱毛症の治療は程度によって異なるそうです。軽度のものであれば、特に治療をしなくても自然に治ってしまうこともよくあるそうです。抜け毛がひどい場合には、副腎皮質ホルモンやミノキシジルなどを用いて治療することもあるそうです。
6.トリコチロマニア
トリコチロマニアとは、簡単に言うと抜毛癖、つまり自分の髪の毛を自分で抜いてしまう癖のことを言います。頭髪を抜いてしまうこともあれば、眉毛を抜いてしまうこともあるということです。
トリコチロマニアの原因とは?
トリコチロマニアになるのは大抵が子供だということです。トリコチロマニアはある意味、爪を噛んだり貧乏ゆすりをしたりといった癖と同じようなもので、精神的なストレスを感じたときに起こるといわれています。
トリコチロマニアになる子供は、どちらかというとおとなしくて聞き分けのよい子が多いそうです。ストレスを外に発散することができずに内側に向かってしまい、それが髪の毛を抜くという行為になって現れるということです。
トリコチロマニアの治療法や予防法は?
トリコチロマニアは肉体的な病気というよりは精神的な疾患なので、子供の抱えているストレスを理解し、子供に寄り添うことが重要となります。あまりにも治らない場合には、心療内科や精神科を受診するとよいでしょう。
7.粃糠性脱毛症
粃糠性脱毛症(ひこうせいだつもうしょう)とは、簡単に言うと、フケが毛穴をふさいでしまい、老廃物が排出されなくなることによって雑菌が繁殖し、結果として頭皮に炎症が起こって抜け毛が増えてしまう疾患のことを言います。
粃糠性脱毛症の原因とは?
粃糠性脱毛症は男性にも見られなくはないのですが、どちらかというと女性に多い脱毛症として知られています。原因は、刺激の強いシャンプーによる洗髪や、ヘアカラー、パーマなどの外力によって頭皮に負担がかかることだといわれています。
外的な刺激によって頭皮が炎症を起こすことでフケの量が増え、それが毛穴をふさぐことによってさらに炎症状態が悪化するという悪循環を招くことになります。結果として抜け毛が増えてしまうということです。
粃糠性脱毛症の治療法や予防法は?
粃糠性脱毛症の治療は、炎症を起こしてしまった頭皮の炎症を鎮めることが先決となります。そのためにはステロイド製剤を用いた治療が有効だということです。また、経度の粃糠性脱毛症の場合は、殺菌系シャンプーで回復が期待できるということです。
8.びまん性脱毛症
びまん性脱毛症とは、頭皮全体にわたっての薄毛が見られる状態のことを言います。男性型脱毛症のように、局所がはげあがるといった状態ではなく、髪の毛全体のボリュームがダウンしたり、地肌が見えるといった特徴があります。
びまん性脱毛症の原因とは?
びまん性脱毛症の原因は多岐にわたっています。まずは加齢がその原因として挙げられています。単純に年をとることによって、細胞分裂が活発でなくなることで抜け毛が増えてしまうということです。一般的には60代以降の女性に多くみられるということです。
また、精神的なストレスによってもびまん性脱毛症が起こるといわれています。他にも、経口避妊薬(ピル)を服用している場合、びまん性脱毛症が起こる可能性があるということです。
びまん性脱毛症の治療法や予防法は?
びまん性脱毛症の治療は、おもにミノキシジルを配合した育毛剤や、天然由来の育毛剤などを用いて治療を行うということです。また、ストレスがびまん性脱毛症の原因となることもあるので、適度にストレスを発散することも重要です。
9.誤ったヘアケアによる脱毛
抜け毛の原因としては、誤ったヘアケアも挙げられています。特に、女性の場合は毎日の洗髪習慣や髪の毛のお手入れの習慣が、抜け毛につながる可能性もあるということです。
誤ったヘアケアとは?
あまり知られていないことかもしれませんが、市販のシャンプーには髪の毛や頭皮のダメージのもととなる化学的成分が含まれているケースが多くあります。良かれと思って髪の毛を洗っていることが、実は抜け毛の原因となっていることもあるということです。
また、ドライヤーの熱も髪の毛や頭皮にダメージを与えてしまいます。髪の毛を完全に乾かそうとすると、髪の毛にダメージを与えてしまうものです。毛根部分には熱を与えないようにしましょう。
過度なダイエットによる脱毛
女性特有の抜け毛の原因としては、過度のダイエットも挙げられています。急に食事制限をしたりすると、身体の栄養状態が低下します。髪の毛もタンパク質でできているので、栄養状態が低下すると毛髪の状態にも悪影響を与えることとなります。
発毛のための生活習慣改善法について!
抜け毛を減らして発毛につなげるためには、日常の生活習慣を改めることも重要です。では、どのような方法が考えられるのでしょうか。
身体を冷やさない
女性には冷え症が多いですが、身体が冷えると血行が悪くなってしまいます。血液は全身に酸素と栄養を運んでいるので、血行が悪くなった場所は栄養状態が低下することとなります。栄養状態の低下が頭皮に見られれば、抜け毛が増えることともなりかねません。
普段からゆっくりと湯船につかって身体を温めたり、適度な運動をすることで全身の血液循環を良くすることが大事です。
食習慣を改める
髪の毛もタンパク質でできているので、良質なタンパク質を摂取することが重要です。特に、大豆に含まれているイソフラボンは、女性ホルモンと似た働きをしてくれるということなので、大豆製品を積極的に摂取するようにしましょう。
また、身体の調子を整えるにはビタミンやミネラルを摂取する必要があります。特に、現代人はビタミンとミネラルの摂取量が絶対的に不足しているといわれているので、フレッシュな果物や野菜をたくさん摂るようにしましょう。
ストレスをためすぎない
「ストレスは万病のもと」などといわれますが、髪の毛にとってもストレスは大敵です。身体にストレスがかかると、自律神経のバランスが乱れるといわれています。自律神経とは、交感神経と副交感神経の2つからなっていますが、ストレス状態になると、交感神経が優位になります。
交感神経が優位になると血管が収縮するため、血液の循環が悪くなってしまいます。また、睡眠の質が低下して身体の回復力も下がることとなってしまいます。そして、昼間に眠くなって集中力が低下するという悪循環に陥ります。
仕事や家事でストレスがたまるのは仕方がないことではありますが、適度に発散するように心がけましょう。趣味に打ち込むのもいいですし、運動をすれば血行が良くなって体も疲れ、睡眠の質が向上するとたくさんのメリットがあります。
女性のためのヘアケアアイテム
それでは、女性の抜け毛を予防するためのヘアケアアイテムについて紹介しておきたいと思います。毎日のことですから、髪や頭皮によいものを選びたいですね。
育毛シャンプー
誤ったヘアケアのところでもお話ししましたが、市販のシャンプーには化学的成分など髪の毛や頭皮にダメージを与えるものが含まれていることがよくあります。そのため、天然由来のシャンプーや、育毛用のシャンプーを利用するとよいでしょう。
女性用育毛剤
育毛剤には男性用と女性用、男女共用のものがあります。また、発毛剤に関しては男性しか使えないものが多数あるので、女性用の育毛剤や発毛剤を選択することが重要です。
いつまでも若々しくキレイな髪のために
髪は女性の命などと言ったりしますが、身体がボロボロなのに髪の毛だけがキレイということはあり得ません。やはり、身体が健康であって初めて、髪の毛も美しく保てるということができます。
そのためにも、日頃から疲れやストレスをためすぎないようにして、適度に身体を動かし、栄養バランスのよい食事を摂るように心がけましょう。