
年齢とともに髪の毛が少なくなってくる人もいれば、髪の毛が白髪に代わってくる人がいます。では、白髪になったり薄毛になったりするのには、どのような理由が考えられるのでしょうか。
また、両方が同時に起こるようなこともあるのでしょうか。
白髪の原因ってなに?
それではまず、白髪になってしまう原因について見ていきたいと思います。一般的に加齢とともに白髪が増える傾向があるようですが、なぜそのようなことが起こるのでしょうか。
ハッキリとした原因は不明
実は、白髪になってしまう原因は、現代医学をもってしてもハッキリとしたことが分かっていないそうです。仕組みだけを説明すると、年齢とともにメラノサイトの働きが弱くなるからということになります。
メラノサイトは色素細胞と呼ばれる細胞の一種で、メラニン色素を作る働きがあります。健康的な日本人の髪の毛にはメラニン色素が多く含まれているため、緑の黒髪などといわれるように、日本人の髪の毛は黒々としている訳です。
ところが、なぜ年齢とともにメラノサイトが減少していくのかについて、ハッキリとしたことが分かっていないのです。一説には、紫外線を浴びることによって色素細胞に損傷が与えられたり、色素細胞が衰えたりすることが原因とする立場の医師もいます。
生活習慣が原因となるケースも
白髪になる原因としては、生活習慣が関与しているとする説もあります。たとえば、過度のストレスによって白髪が増えるということは、なんとなくイメージできるのではないでしょうか。
本当かどうかは分かりませんが、フランス革命によってその波乱の生涯を終えることとなったマリー・アントワネットは、処刑を前にして髪の毛が真っ白になったという伝説があります。
また、漫画などでも多大なストレスがかかったときに、髪の毛が真っ白になるようなシーンがみられます。ただし、一晩で髪の毛全部が真っ白になるような医学的症例は見当たらないということです。
その他の説としては、髪の毛や頭皮への栄養不足が原因としてあげられることもあります。血液は全身に酸素と栄養を運んでいるので、血行が悪くなった場所には栄養状態の低下がみられることとなります。
頭皮に栄養状態の低下が見られれば、毛髪の健全な成長を阻害することとなるわけで、その表れとして白髪がみられるようになるというのです。その他、喫煙習慣や遺伝によって白髪になるリスクが高くなると考えられています。
染毛剤が原因で白髪になるケース
昔は「緑の黒髪」などといわれ、黒くてつやのある美しい髪の毛が、日本女性の美しさを表すものとされていました。また、現在でも欧米の男性にとって、日本女性の黒髪は大和撫子のイメージを象徴するものとして好まれています。
ところが、日本人女性の方は欧米に憧れるのか、髪の毛を茶色く染める人が増えています。中でも永久染毛剤と呼ばれるヘアダイを利用すると、キレイに染めることができる代わりに、髪の毛や頭皮にダメージを与えてしまうのです。
白髪染めのためにヘアダイを使って髪を染めているのに、それによってかえって白髪が増えてしまうとしたら、何とも皮肉と言うしかありません。
病気が原因で白髪になることも
何らかの病気が原因で、白髪になるケースがあることも分かっています。たとえば甲状腺の機能に異常がみられる場合や、マラリア、胃腸障害などによって白髪が増えることがあるそうです。
また、尋常性白斑という皮膚の疾患にかかると、皮膚の基底層に存在するメラノサイトが減少したり焼失したりすることによって、その部分に生えている毛髪が白くなってしまうことがあるそうです。
最新の白髪研究
最近の研究によって、色素幹細胞と呼ばれる、いわばメラノサイトの赤ちゃんというべき細胞が発見されたということです。幹細胞というとノーベル賞を受賞したiPS細胞が有名ですが、幹細胞系の研究が進んだことによって、メラノサイトの赤ちゃん細胞も特定されつつあるということです。
化粧品メーカーの大手である花王グループでは、白髪の人と黒髪の人の遺伝子分析をおこなうことで、その成長因子に差があることを発見しているそうです。とは言うものの、まだ白髪を解決する決定打は見つかっていないということです。
薄毛の原因ってなに?
それでは次に、薄毛の原因について見ていきたいと思います。白髪に関してはハッキリとした原因が分かっていないということですが、薄毛に関してはいくつかの原因が分かっているようです。
遺伝
白髪もそうですが、薄毛も遺伝によって起こる可能性があるということです。家系的に薄毛の人っていますよね。実は、遺伝子レベルで薄毛になることが分かってきています。
薄毛になる原因として、男性ホルモンが過剰になることがあげられています。男性ホルモンであるテストステロンが、より強力な男性ホルモンであるジヒドロテストステロンへと変化すると、結果として抜け毛が増えてしまうことが分かっています。
男性ホルモンであるテストステロンが、抜け毛の引き金となるジヒドロテストステロンへと変化する際に、重要な働きをする変換酵素として、5α-リダクターゼの存在があげられています。
5α-リダクターゼはテストステロンが、より強力な男性ホルモンであるジヒドロテストステロンへと変化する際に、触媒としての機能を果たすのです。そのため、5α-リダクターゼの分泌量が多ければ、薄毛になるリスクも高くなるという訳なのです。
そして、遺伝的にこの5α-リダクターゼが分泌されやすい人がいるのです。5α-リダクターゼには1型の5α-リダクターゼと2型の5α-リダクターゼとがあるのですが、特に遺伝的に2型の5α-リダクターゼを多く分泌するような人に薄毛がみられやすいということです。
また、男性ホルモンであるジヒドロテストステロンを受容する器官として、アンドロゲンレセプターと呼ばれるものがあります。アンドロゲンレセプターとは、男性ホルモン受容器のことを言います。
アンドロゲンレセプターは誰でも持っているものなのですが、その感受性は人によってそれぞれです。アンドロゲンレセプターの感受性が強いと、ジヒドロテストステロンと反応しやすくなるため、薄毛になりやすくなるのです。
そして、アンドロゲンレセプターの感受性も遺伝によって左右されるということなのです。遺伝的にアンドロゲンレセプターの感受性が強い人は、やはり薄毛になってしまう可能性が高くなるということなのです。
このように書くと、遺伝的に5α-リダクターゼの分泌量が多かったり、アンドロゲンレセプターの感受性が強かったりすると、薄毛からは逃れられないかのようなイメージを持たれるかもしれません。
ところが、薄毛全体でみた場合、遺伝が原因となるケースは全体の25%程度だということです。また、遺伝的要因をもっているからと言って、全員が全員、必ず薄毛になるという訳でもありません。なぜなら、薄毛になるにはその他の要因も複雑に絡んでくるからです。
ストレス
白髪になってしまう要因としてストレスの存在があげられていましたが、薄毛に関してもやはりストレスがその要因となるケースがあります。そもそも、「ストレスは万病のもと」などといわれ、精神的にも身体的にも好ましいものではありません。
なぜストレスが万病のもとになるかというと、ストレス状態が昂じると自律神経のバランスが乱れるからです。自律神経とは私たちが意識しなくても勝手に働いて、私たちの身体を正常に保ってくれている神経のことを言います。
よくある話なのですが、頭痛やめまいなどを訴えて病院に行ったとします。レントゲンやMRIなどの画像診断をしても何も見つからず、症状があらわれている原因が不明な場合、「自律神経失調症ですね」などといわれることがあります。
自律神経失調症と聞くと、何らかの精神疾患のようにイメージされるかもしれませんが、自律神経失調症といわれた場合、それは何の診断もされていないのと変わりません。なぜなら、自律神経失調症とは病名ではないからです。
それはともかく、私たちの生命活動にとって自律神経は欠くべからざる働きをしており、ストレスによって自律神経の働きに異常が生じると、健康面はもちろんのこと、髪の毛の栄養状態にも大いにかかわってくるという訳なのです。
皮脂の過剰な分泌と脂漏性皮膚炎
皮脂が過剰に分泌されることによって、薄毛が進行してしまうケースがあります。ただし、皮脂が毛穴に詰まってしまうことのみによって薄毛が進行するようなことはありません。
皮脂が過剰に分泌されることに「プラスアルファ」がある場合に、薄毛が進行してしまうのですが、そのプラスアルファとは、脂漏性皮膚炎のことをいいます。
脂漏性皮膚炎とは皮膚に赤味をともなったかぶれや湿疹が生じる疾患のことで、頭皮だけでなく小鼻の両脇や耳の裏、背中や胸など皮脂が分泌される場所であればどこでも起こり得ます。
脂漏性皮膚炎になってしまう原因はさまざまなのですが、一つの要因としてマラセチアという真菌(カビの一種)の存在があげられています。皮膚にカビなどというと驚かれるかもしれませんが、マラセチアは人体に数多く存在する常在菌の一種なのです。
常在菌は、健康な人体においては良好なバランスが保たれており、悪さをするようなことはありません。ところが、過労や睡眠不足などが原因で、免疫力が低下すると悪さを始めることが分かっています。
マラセチアは皮脂を餌としているため、脂漏性皮膚炎にともなって皮脂が過剰に分泌している場合、頭皮に湿疹やかぶれを起こし、結果として抜け毛につながることがあるのです。
紫外線
温暖化の影響なのか、日本も年々暑くなってきていますが、紫外線によって薄毛になる可能性が高くなるということです。特に、頭頂部に紫外線を受けることによって、頭皮が固くなってしまいます。また、過度の紫外線を浴びると炎症を起こしてしまいます。
紫外線がなぜ有害かというと、紫外線によって皮膚で活性酸素が発生し、皮膚の脂質が酸化するからです。簡単に言うと、鉄が酸化して錆びるようなものです。
私たちの身体の老化は、酸化と糖化によって起こるとされていますが、紫外線によって酸化することによって、皮膚にシミやシワができたり、動脈硬化が進行したりするという訳なのです。
頭皮が酸化するということは、頭皮が老化することにほかなりません。人体にとって適度な紫外線は有益ですが、過度に浴びないようにすることが重要です。
白髪になると薄毛にはならないって本当なの?
昔からよく、「白髪が出てきたらハゲないから安心」、などといわれることがありました。では、本当に白髪の生えている人はハゲにくいのでしょうか。
ここまで白髪になる原因や薄毛になる原因を見てきましたが、共通する原因がたくさんあることに気がつかれたのではないでしょうか。ということは、白髪が出てきたからと言って、薄毛にならないとは言えないということです。
白髪になった上に薄毛まで進行してしまうと、ショックも倍増ということになります。そうならないためにも、早めの対処をすることが重要となります。
白髪が目立ってきた場合の対処法
白髪になってしまう原因は、ハッキリとしたことが分かっていないということでした。それでは、白髪が目立ってきた場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
白髪染めをする
白髪が目立ってきた場合の直接的な解決法としては、白髪染めをするという方法があります。ただし、先ほども述べたように、ヘアダイを用いた場合、かえって頭皮や毛髪にダメージを与えるリスクがあることを忘れないようにしてください。
白髪を抜くのはNG!
全体的に白髪の場合はともかく、数本しか白髪がないときって、目立ってしまいますよね。そんなときについつい抜いてしまうことがあるのですが、白髪を抜くのは絶対にやってはいけません。
髪の毛を抜いてしまうと、毛根や毛母細胞にダメージを与えてしまうこととなり、白髪どころか薄毛の原因にもなりかねません。どうしてもというときには、髪の毛の生え際から切るようにしましょう。
薄毛が目立ってきた場合の対処法
次に、薄毛が目立ってきた場合の対処法について見ていきたいと思います。早めに対処することで、将来ハゲてしまわないようにしましょう。
病院を受診する
最近は、薄毛も病院で治療できる時代になってきています。薄毛になる原因はさまざまなので、まずは専門家に相談して、原因を特定することから始めましょう。
生活習慣の見直し
睡眠不足や疲労の蓄積、ストレス状態の継続などによって抜け毛のリスクが高まります。生活習慣を見直すことによって、身体の回復力を高めるように心がけましょう。
育毛剤を利用する
まだそれほど進行していない薄毛であれば、育毛剤を利用することによって抜け毛を予防できる可能性があります。ただし、毛生え薬ではないので、そこのところを勘違いしないようにしましょう。
白髪と薄毛は共通する原因も多い!
白髪と薄毛に関してみてきましたが、いかがだったでしょうか。
現在のところ、白髪を治す方法は見つかっていないということですが、白髪も薄毛も同じような原因で発生することがあるということを理解して頂けたことと思います。
白髪だけならともかく、薄毛も併発しないように気を付けてくださいね。