
漢方によって抜け毛を防ぐ方法があるということをご存知でしたか?
テレビCMなどで、AGAクリニックに通院して薄毛を治療するという方法が一般的になってきた感がありますが、古くから伝わる漢方薬でも抜け毛予防することが可能なのです。ただし、AGA(男性型脱毛症)の治療に関してはAGAクリニックで処方される治療薬を使用した方が現実的には効果が高いようです。
では、漢方はどの程度抜け毛に対して効果を発揮してくれるのでしょうか。今回の記事では、抜け毛に対する漢方の効果と、プロペシアに代表される西洋医学的な治療と漢方のような東洋医学的な治療のどちらに効果があるのかを解説していきます。
漢方は抜け毛に効果があるのか?
抜け毛の量が気になってきた時に、多くの方が取る対策としては、育毛剤の使用やAGAクリニックへの通院、生活習慣の改善など、いくつかのものが考えられますが、あまり知られてない対策方法の一つとして、漢方があります。
漢方薬という言葉を聞くと、「中国のもの」と思い込んでいる方が多いようですが、実は漢方は中国から伝わってきたものが、日本独自で発展した東洋医学の一つであり、日本独自の医療です。
そして、この漢方薬によって抜け毛や薄毛を治療できるという考え方があります。では、そもそも漢方とはどのようなものなのでしょうか。
漢方とは
漢方の考え方では、人の体は気と血と水という三つの要素から構成されています。そしてこのバランスがいい状態というのが病気になりにくい健全な状態ということになります。逆に体が何らかのトラブルを抱えている時というのは、この三つのバランスが崩れていたり、エネルギーの循環が悪くなっていたりするということです。
気は、元気の気を意味し、人が生きていくために必要なエネルギーそのもののことを指します。気は血によって全身に運ばれ、体中のエネルギーの源になります。気に以上が出ると、体が冷えたり、イライラしたり、眠れなくなったり、疲れが取れなくなったりします。
血は、そのまま血液のことを指します。気を体全体に運ぶという役割を果たしています。血の量が減ると気の巡りが悪くなり、肩こり肌荒れ、貧血、便秘などが起こります。
水は、血液以外の人の体を巡っている体液のことを指します。人の体は約60%が水でできていますので、カラダ全体の潤いを整えるために水は重要な役割を果たしているのです。水に異常が出ると、体のむくみや耳鳴りなどの症状が出ます。
漢方では、この三つの要素のバランスをとることを重視します。例え「気・血・水」全体の量が少なくなったとしても、そのバランスさえ取れていれば問題はありません。
逆にどれか一つだけが極端に減ったり増えたりしてバランスが悪くなると、体のどこかに異常をきたします。そのため漢方薬では、気と血と水の中で足りなくなった部分を補い、時間をかけて体調を整え、直接ではなく間接的に体の悪い部分を治療するという考え方になります。
漢方における抜け毛とは
漢方の考え方では、髪の毛は血に深く関わっています。十分な量の血が体の中を巡っていれば、その血の余りが髪の毛になると考えられているのです。血液の中に十分な栄養があれば髪の毛を含めて全身に栄養が行き渡ります。
そのため抜け毛が多い人は、血が不足している、または血の巡りが悪くなっている、ということが考えられます。また、出産後に抜け毛が増えるというのは、出産によって血を消費しているからであると考えられます。
※これはあくまでも漢方での考え方であり、西洋医学での抜け毛の考え方とは異なります。
抜け毛に効果的な漢方5選!
漢方がどのようなものなのかということや、漢方と抜け毛の関係性についてご理解いただけたと思います。では、ここからは具体的な話をしていきます。
漢方というのは医学的に効果が認められた生薬のことです。生薬というのは化学成分を含まず、植物をそのまま煎じたり乾燥させて砕いたりして、形状を変えたものです。
そして、元となる植物の組み合わせによって多くの種類の漢方薬は作られています。漢方薬と一言で言っても、数え切れないほど様々なものがありますが、その中でも抜け毛に効果が期待できる。漢方薬を5種類紹介させていただきます。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
髪の毛と深い関わりのある血を全身に巡らせる働きがある漢方薬が、当期芍薬散です。
血は全身を巡り体中に栄養や生命エネルギーを届けます。血の量が少なかったり、廻りが悪くなったりすると体の隅々まで栄養やエネルギーが十分に行き届かなくなります。これはもちろん髪の毛にもいえることです。
髪の毛が成長するために必要な栄養素やエネルギーが足りなくなり、抜け毛に繋がってしまうのです。そのため、当期芍薬散によって血行を良くし、全身に栄養素を行き渡らせます。抜け毛だけではなく冷え性の改善や、女性の方であれば生理不順の改善にも役立ちます。
桂枝茯苓丸料加薏苡仁(けいしぶくりょうがんりょうかよくいにん)
こちらも当帰芍薬散と同じく、血の巡りを良くするという役割に加え、さらに水の巡りも良くするという役割があります。水と血は非常に深く関わっており、肌トラブルとも関連しています。
漢方では肌の表面から水が排泄されると考えられており、何らかの原因で肌がふさがれると、水が外に排泄されず、トラブルが起こると考えられています。
そして、肌に水や熱がたまると、それが障害物となり、血の巡りが悪くなります。血の巡りが悪くなると、全身への栄養が行き渡らなくなり、髪の毛が成長するために必要となる栄養分も足りなくなってしまいます。桂枝茯苓丸料加薏苡仁は、水と血のバランスを整え、肌の中の水分量を調整してくれますので、水と血の両方を調整する働きがあるのです。
十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)
十味敗毒湯は、皮膚疾患などに広く利用される肌トラブル向けの漢方です。気・血・水の中でも、水に作用する働きがあります。他の要素と同じく、肌や頭皮には水が多くても少なくてもいけません。
水が多すぎると肌がジュクジュクとした状態になってしまいますし、少なすぎると肌が乾燥した状態になってしまいます。頭皮ももちろん肌の一種ですので、水分の量が重要になります。水の量が多かったり少なかったりすると、熱がこもったり乾燥してかゆくなったり、肌荒れが起きたりしてしまいます。
これらは最終的に炎症の原因となり、炎症性の脱毛症を引き起こす可能性があります。十味敗毒湯は肌を水がスムーズに流れることができるように、余分な物を取り除き、そのほかの2つの要素とのバランスを取る役割を果たしますので、頭皮を含めて体全体の肌を健康な状態にしてくれます。
竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)
竜胆瀉肝湯は、三つの要素の中でも特に気に作用します。気は、はっきりと目に見えるものではありませんが、人の体を支える全ての原動力であり、車で言えばガソリンのようなものです。
竜胆瀉肝湯によって気の巡りが良くなれば、髪の毛が成長するためのエネルギーも頭皮に届きやすくなります。また、気が停滞すると尿が出にくくなるという症状が現れます。尿は体の中の悪いものを外部に排出するという役割を果たしているため、気が足りなくなると体の中の悪いものも蓄積されるということになってしまいます。
さらに、体内の水の量のバランスも悪くなるので、尿に関するトラブルが体全体の不調まで招くことにもなり、これは抜け毛にも繋がってきます。
ヨクイニン
ヨクイニンは、ハトムギの種のことで、生薬として古くから肌のために使用されてきました。水分バランスを整える作用や抗炎症作用を持っています。頭皮で炎症が起こると、それは直接の抜け毛につながってしまいますし、水分バランスが悪くなれば、肌のトラブルや抜け毛にも繋がります。
直接的にせよ間接的にせよ、抜け毛に効果がある漢方薬にはたくさんの種類があり、今回ご紹介したのはごく一部です。
漢方vsAGA治療薬どちらが抜け毛に効果があるのか?
抜け毛に効果的な漢方薬をご紹介させていただきましたが、気になるのは「実際のところ抜け毛に効果的なのは漢方薬とAGA治療薬のどちらなのか?」ということでしょう。
それを考えるためには、まず抜け毛の原因が何なのかということを特定しなければいけません。抜け毛の原因によって、漢方薬の方が治療できる可能性が高かったり、AGA治療薬の方が治療できる可能性が高かったりします。
抜け毛の原因の特定
抜け毛にお悩みの場合は、治療方法を考える前にその原因を特定しましょう。
はじめに知っておいて欲しいのは、体に何の異常がなかったとしても、健全な状態で髪の毛は1日70本程度抜けるということです。「ヘアサイクル」という、髪の毛が生えてから抜け落ちるまでの期間を考えてみても、100本以下の抜け毛は正常な範囲です。
スタイリング剤などで髪の毛を固めていると、ヘアサイクルによって自然に抜け落ちた50本から70本の髪の毛が、シャンプーの際にまとめて抜け落ち、抜け毛の量が増えたと錯覚してしまう場合があります。しかし、それは異常ではなく正常なことなのです。
それを踏まえた上でも抜け毛が増えたと考えられる場合は、まずその抜け毛がAGAなのかAGAではないのかということ考えていかなければいけません。男性の場合、抜け毛の悩みの9割以上は男性型脱毛症(AGA)になります。特徴としては前頭部の髪の毛がM字型に後退してきたり、つむじ部分の髪の毛が集中的に抜け落ちてきたりするということがあります。
つまり、特定の部位の髪の毛だけが局所的に抜けるということです。そしてその進行は非常に緩やかで、半年や1年二年という期間をかけて徐々に薄くなっていきます。
AGA以外の脱毛症は、その進行が急であり、数ヶ月や数週間という期間で一気に抜けていきます。免疫異常によって起こる円形脱毛症や、自分で髪の毛を抜いてしまう精神疾患の一種であるトリコチロマニア、ダイエット中の女性などに見られる飢餓状態による栄養不足の脱毛症など、いくつかの種類があります。まず、AGAなのかAGAでないのかということを見極めてください。
AGAならAGA治療薬が最善
AGA治療薬はその名前の通り、AGAに特化した治療薬です。つまり、円形脱毛症など、AGA以外の脱毛症で使用したとしても効果はありません。その代わりAGAの症状が出ている方が使用すれば、確実に改善に向かいます。AGA自体の進行が緩やかであるため、その改善のスピードも緩やかですが、高確率で効果があります。
具体的にはフィナステリドという成分を主成分とした。内服薬(プロペシア等)や、デュタステリドという成分星成分とした内服薬(ザガーロ等)が、AGA治療薬として有名なものです。これらはAGAの原因となる悪玉ホルモンの生産をストップさせ、脱毛症の進行を止めてくれます。その他にも、発毛促進作用があるミノキシジルの外用薬や内服薬などもクリニックによっては処方してくれる場合があります。
AGA以外の抜け毛予防は漢方に可能性がある
AGA治療薬は西洋療法なので特定の症状に対してピンポイントで効果を生み出します。しかし、漢方は東洋医学なので、体全体のバランスを良くし、自然治癒力を高めてくれます。そのためAGA以外の脱毛症は漢方が効果を発揮する可能性があります。
漢方薬というもの全般に言えることですが、西洋医学で処方される医薬品と違い、「確実にこの症状に効果がある」という明確なことは言えませんが、少なくとも体全体を良い方向に導き、抜け毛を少なくする可能性をアップさせるということはいえるでしょう。
まとめ
抜け毛に悩んでいる方は、まずその抜け毛がAGAによるものなのか、それ以外の何らかの原因があって毛が抜けているのかということ特定してみましょう。そして原因がAGAなのであれば、AGA治療薬を使用した方が良いでしょう。何を使えばいいかわからないという方は、AGAクリニックに行ってみれば間違いありません。
逆に、漢方薬を使用することによって得られる効果は、体全体の気の流れや血の流れ、水の流れを良くすることです。そして、それらのバランスを取ることによって、自然治癒力を高め、AGA以外の何らかの異常によって起きる脱毛症を改善する可能性があります。
AGAではない理由で髪の毛が抜けをしている場合も、もし原因が特定できなければ、一度AGAクリニックに行ってみると良いでしょう。医師免許を持った医師が診察してくれるので、何が理由で髪の毛が抜けているのか原因を教えてくれるはずです。
つまり、原因が何であれ抜け毛が気になる方はまず漢方の使用を考える前にAGAクリニックに行ってみるのがお勧めです。その診察の結果、AGAではない何らかの理由で抜け毛が発症しているのであれば漢方薬を使用するということも視野に入れてみると良いでしょう。