
髪は女性の命などといわれますが、男性にとっても髪の毛は大事なもの。薄毛に悩まされている男性はたくさんいますが、そもそもなぜ薄毛になってしまうのでしょう。
実はその原因の1つとして男性ホルモンの存在があげられているのです。今回の記事では、薄毛と男性ホルモンとの関係、そして薄毛への対処法を紹介したいと思います。
薄毛の原因って何ですか?
一口に薄毛と言っても、実はさまざまな原因があります。そこで、最初に薄毛の原因としてどのようなことが考えられるのかを見ていきたいと思います。
遺伝
薄毛になる原因の1つとして、遺伝があげられることはよく知られていることだと思います。家系的に薄毛の人は、将来薄毛になってしまうリスクが高いということです。
ただ、薄毛になる遺伝子を持っていると必ず薄毛になってしまうという訳でもないようです。実際に遺伝が原因で薄毛になるケースは、薄毛全体の4分の1程度という説もあるそうです。
ストレス
「ストレスは万病のもと」などといわれたりしますが、髪の毛や頭皮の健康にとっても、ストレスは有害なものとなるようです。
ストレスがなぜ万病の元といわれるかというと、ストレス状態が続いた場合、自律神経のバランスが乱れてしまうからです。
自律神経は交感神経と副交感神経から成っており、その両者のバランスによって私たちの健康が保たれているのです。
自律神経は文字通り、自らを律する神経であり、私たちの意志とは関わりなく、勝手に働いてくれています。例えば体温調節や呼吸、内臓機能の働きなどがあげられます。
自律神経はよく車のアクセルとブレーキに例えられますが、ストレス状態が続くと、簡単に言うとアクセルを踏みっぱなし=交感神経優位の状態になるのです。
交感神経が優位になると血管が収縮し、血液の循環が悪くなります。血液は全身に酸素と栄養を運んでいるので、血行が悪くなった場所は栄養状態が低下してしまいます。
栄養状態の低下が髪の毛や頭皮にみられた場合、髪の毛が太く成長しなくなったり、成長する前に抜け落ちてしまったりするリスクが高くなる訳なのです。
洗髪習慣
髪の毛をちゃんと洗っているつもりでも、実は髪の毛の洗い方によって薄毛になるリスクが高くなるケースがあります。原因の1つとしては、シャンプーの選び方があげられます。
市販のシャンプーには洗浄力の強いものが多いのですが、その分、頭皮への刺激も増してしまいます。敏感肌の人や体質に合わない人の場合、シャンプーによってかぶれが起こったり、炎症が起こったりする可能性があります。
かぶれや炎症によって頭皮がかゆくなってしまうと、髪の毛を洗うときに爪や指先でゴシゴシと擦ってしまい、それによって抜け毛が増える可能性が高くなります。
また、シャンプーやリンス、コンディショナーなどをしっかりと洗い流さないことも薄毛のリスクを高めます。洗剤が頭皮に残ってしまうと、やはりかぶれや炎症の元となってしまいます。
あと、男性の方に意外と多いのが、ドライヤーを使わずに自然乾燥させているケースです。髪の毛や頭皮が濡れた状態でいると、雑菌が繁殖しやすくなってしまいます。
薄毛と男性ホルモンとの関係について
薄毛になってしまう原因はさまざまである、ということが分かったところで、次に薄毛と男性ホルモンとの関係について解説していきたいと思います。
テストステロンとジヒドロテストステロン
男性に見られる薄毛のことを男性型脱毛症(AGA:Androjenetic Alopecia)などと呼ぶことがありますが、男性型脱毛症の原因として、男性ホルモンの存在があげられています。
男性ホルモンは、がっしりとした体つきや筋肉質な体つき、ひげ、低い声、攻撃的な性格など、いわゆる「男性らしさ」を形作る際に必要なホルモンとされています。
男性ホルモンとして有名なものにテストステロンの存在があげられますが、このテストステロンがより強力な男性ホルモンであるジヒドロテストステロンに変化すると、薄毛のリスクが高くなることが分かっているのです。
ジヒドロテストステロンには、毛母細胞の働きを低下させる働きがあるため、ジヒドロテストステロンの量が増えると、髪の毛が抜けおちるリスクが高くなるのです。
ジヒドロテストステロンが生成される仕組み
それではなぜ、テストステロンがジヒドロテストステロンへと変化するのでしょうか。その際に重要な働きをするのが、5α-リダクターゼと呼ばれる変換酵素です。
5α-リダクターゼはテストステロンがジヒドロテストステロンへと変化する際に、触媒としての働きをすることが分かっています。そのため、薄毛を予防するには5α-リダクターゼの分泌を抑制し、ジヒドロテストステロンの産生を抑える必要があるのです。
5α-リダクターゼの種類
薄毛になる際にカギとなる5α-リダクターゼですが、実は5α-リダクターゼには1型の5α-リダクターゼと2型の5α-リダクターゼとの2つの種類があることが分かっています。
そして、薄毛になるリスクが高いのが、2型の5α-リダクターゼなのです。なぜかというと、1型の5α-リダクターゼが全身の表皮に多く分類しているのに対し、2型の5α-リダクターゼは頭頂部や前頭部に多く分布しているからなのです。
そのため、2型の5α-リダクターゼの分泌量が増えてしまうと、頭頂部に見られるO字ハゲや前頭部に見られるM字ハゲ、それらの複合型であるU字ハゲになるリスクが高くなってしまうのです。
男性ホルモンによる薄毛も遺伝が関係する?
薄毛になってしまう原因として、男性ホルモンが関わっていることが分かりました。それでは、男性ホルモンについても遺伝が関わっているのでしょうか。
アンドロゲンレセプターが関与
アンドロゲンレセプターとはあまり耳馴染みのない言葉ですが、日本語でいうと「男性ホルモンの受容体」といったような意味があります。
アンドロゲンレセプターは体内で分泌される男性ホルモンを受け取って、利用できるように変換するという働きを持っています。
ところが、先程出てきたジヒドロテストステロンがアンドロゲンレセプターに反応することによって、薄毛になるリスクが高くなることが分かっているのです。
アンドロゲンレセプターは誰でも持っているものなのですが、その感受性には強弱があることが分かっています。つまり、アンドロゲンレセプターの感受性が高い人ほど、薄毛になる可能性も高くなるという訳なのです。
そして、アンドロゲンレセプターの感受性は遺伝によって左右されるということなのです。そのため、男性ホルモンが旺盛で、アンドロゲンレセプターの感受性が高いほど、男性型脱毛症になるリスクが高くなるのです。
5α-リダクターゼ
男性型脱毛症になる際に、重要な働きをする5α-リダクターゼですが、5α-リダクターゼに関しても、遺伝的に分泌しやすくなることが分かっています。
男性ホルモンはだれでも分泌されるものですが、5α-リダクターゼが遺伝的に分泌されやすい場合、ジヒドロテストステロンを生成し、男性型脱毛症になってしまうリスクが高くなるのです。
女性の薄毛にも男性ホルモンが関与する?
薄毛というと男性型脱毛症ばかりが注目されますが、実は女性に見られる薄毛についても、男性ホルモンの関与しているケースが見られるということです。
男性ホルモンというと男性にしか分泌されていないように思われるかもしれませんが、実は、女性も副腎や卵巣で男性ホルモンであるテストステロンを分泌しているのです。
男性ほど顕著ではないにせよ、女性であってもがっしりとした骨格をしていたり、筋肉が発達していたりするケースがありますし、男性と同様に性的な衝動に駆られることもあると思います。
そういった場合、すべてではないにせよ、男性ホルモンが関与しているのではないかと考えられているのです。
女性に見られる薄毛にもさまざまな原因があるのですが、特に中年期以降に見られる女性の薄毛のことを、「女性男性型脱毛症(FAGA:Female Androjenetic Alopecia)」と呼ぶことがあります。
中年期以降の女性は徐々に閉経へと向かっていくのですが、それにともなって女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が減少していきます。
エストロゲンはテストステロンとは反対に、女性らしいしなやかな体つきや丸みを帯びた胸やお尻といった、いわゆる「女性らしさ」を形作るのに重要な働きをするホルモンです。
そのため、エストロゲンの分泌量が減少すると、相対的に男性ホルモンの量が増えることとなり、それによって女性であっても薄毛になる可能性があるのです。
ただ、女性の場合は男性型脱毛症のように局所が抜け落ちて禿げ上がるようなことはあまりなく、髪の毛全体のボリュームが低下したり、地肌が透けて見えたりといったことが起こります。
男性ホルモンが原因の薄毛への対処法
薄毛になる原因はいろいろありますが、男性ホルモンが原因と考えられる薄毛に対しては、どのように対処をすればよいのでしょうか。
病院やクリニックで治療を受ける
男性ホルモンが原因の薄毛の場合、男性型脱毛症を専門としている病院やクリニックで治療を受けるという方法があります。
薄毛になる理由はさまざまなので、まずは専門家に診てもらって、自分の薄毛のタイプを見極めることが重要だという訳です。
男性型脱毛症の治療は原則として保険が適用されないため、治療にかかる費用や処方箋、手数料などは全額自己負担となりますが、専門家に診てもらった方が確実だというメリットはあります。
男性型脱毛症の治療薬を利用する
男性ホルモンが原因の薄毛の場合、男性型脱毛症の治療薬を利用するという手もあります。男性型脱毛症の改善に効果があるとされる有効成分には、フィナステリドとデュタステリド、そしてミノキシジルがあります。
フィナステリドを有効成分とする男性型脱毛症の治療薬としてはプロペシアが有名です。プロペシアは国内での特許期間が終了しているので、ジェネリック(後発医薬品)も開発されており、比較的薬価を抑えられるというメリットがあります。
デュタステリドを有効成分として配合している男性型脱毛症の治療薬としては、2015年に販売されたザガーロが有名です。
ミノキシジルを有効成分として配合している治療薬としては、大正製薬が発売している「リアップシリーズ」がよく知られています。
ちなみに、フィナステリドとデュタステリドに関しては内服タイプのものが厚生労働省によって認可されていますが、ミノキシジルに関しては、塗り薬タイプのみが認可されています。
また、フィナステリドとデュタステリドに関しては、原則として女性の服用は禁止されています。なぜなら、フィナステリドとデュタステリドは男性ホルモンにアプローチする医薬品だからです。
特に、お腹の中に男の赤ちゃんがいる女性がフィナステリドやデュタステリドを誤飲してしまった場合、赤ちゃんの男性器の発達に障害をきたすこともあるということです。
そのため、妊娠中の女性がいる場合、男性型脱毛症の治療薬の管理は厳重におこなうようにする必要があります。医師によってはフィナステリドやデュタステリドに触れるだけでも、肌から有効成分を吸収するので気をつけるように警告する人もいます。
一般的にこれらの治療薬は、病院やクリニックで処方してもらうこととなりますが、通信販売で購入することも可能となっています。
ただ、男性型脱毛症の治療薬も医薬品である以上、副作用のリスクがあることを忘れてはなりません。やはり最初は病院やクリニックで診察を受けた上で、処方してもらうのが安全と言えるでしょう。
生活習慣を見直す
テストステロンが減少し、ジヒドロテストステロンが増えてしまうのは、遺伝や加齢以外にも原因があるとされており、その一つが生活習慣だということです。
健康について一般的に言われることですが、重要となるのが適度な運動と食習慣、そして睡眠です。適度な運動と質のよい睡眠は、髪の毛の成長にもよい影響を与えます。
また、食事によって5α-リダクターゼの分泌を抑制することが可能だということです。特に、イソフラボンや亜鉛を摂ると効果的に5α-リダクターゼの分泌を抑制することが可能だということです。
男性ホルモンだけが薄毛の原因ではありません
今回は男性ホルモンと薄毛との関係について解説してきました。
薄毛というと遺伝と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際には遺伝が原因の薄毛は全体の4分の1程度ということです。
日頃から生活習慣に気をつけて、遺伝以外の薄毛の要因を減らすように心がけましょう。