
薄毛の治療を考えている人の中には、副作用のおそれがある育毛剤を頭皮に塗ったり、プロペシアを服用したりすることに躊躇している方も多いのではないでしょうか。
インターネットで「育毛剤 副作用」という言葉で検索をかけると様々な症状が出てきます。医薬品や、医薬部外品といった、人の体に何らかの作用を及ぼす化学成分を服用したり、頭皮につけたりするのは誰でも恐怖はあるものです。
しかし、世の中には髪の毛に良いとされるサプリメントも多数存在しています。サプリメントは医薬品や医薬部外品ではなく、健康食品という分類に入りますので、副作用を心配する必要は、過剰摂取にならない限りありません。薄毛を予防したい人や、副作用が怖くて育毛剤に手を出せない人などは、まずサプリメントから初めてみるのが良いのではないでしょうか。
今回の記事では、髪の毛に良い効果のあるサプリメントと育毛の関係についてお伝えしていきます。
抜け毛はそもそもサプリで治るのか?
サプリメントは、栄養補助食品です。つまり、日頃の生活の中で不足している栄養素を効率よく補うための食品だということです。錠剤の形をしているので、薬に似ていて、なんだか体の悪い部分を治してくれそうな気がしますが、実際のところサプリメントに抜け毛を予防する効果は本当にあるのでしょうか?
結論から言えば、「100%とは言えないが、確実にある」ということがいえます。今回ご紹介するのは、ノコギリヤシ、亜鉛、イソフラボンという3種類のサプリです。
この3種類の成分というのは、いずれも科学的に薄毛に効果があるということが証明されている成分です。そのため、効果の大小はあるでしょうし、個人差もあるでしょうが、薄毛に対して効果があるという事は間違いありません。では、それぞれのサプリメントが、どのように抜け毛に効くのか、見ていきましょう。
1.ノコギリヤシのサプリ
ノコギリヤシの働き
男性の頻尿予防などの目的で、ノコギリヤシのエキスが入ったサプリメントが販売されています。しかし、このノコギリヤシのサプリメントは抜け毛予防にも有効なのです。現在、AGAクリニックなどで内服薬として処方されている「プロペシア」という医薬品があります。このプロペシアに入っているフィナステリドという成分は、もともとノコギリヤシに入っていた成分が元になって作られています。
そのため、プロペシアに比べれば、効果は少ないかもしれませんが、同じ種類の薄毛予防の効果がノコギリヤシにはあるのです。そもそも、人は何故薄毛になってしまうのでしょうか。その理由は、男性ホルモンであるテストステロンと、還元酵素である5αリダクターゼが結合してできるジヒドロテストステロンという悪玉ホルモンが毛根を攻撃するためです。
つまり、このジヒドロテストステロンを生み出さなければ、髪の毛は抜けないということです。ノコギリヤシやプロペシアの持つ効果というのは、この内の5αリダクターゼの活動を阻害するという効果です。5αリダクターゼが阻害されれば、テストステロンが結びつくものがなくなり、ジヒドロテストステロンが生成されないということになります。
実際、このプロペシアが開発されてからの育毛業界の変化は激しく、これまで存在しなかった「医師が薄毛を病気とみなして治療」するAGAクリニックがたくさん作られたり、これまで薄毛の原因を「血行不良」や「皮脂のつまり」だと主張してきた育毛サロンが一気に規模を縮小したりしました。
このプロペシアという医薬品は、世界の育毛業界をひっくり返したと言っても過言ではありません。そのプロペシアが生まれる元となったノコギリヤシですので、男性型脱毛症の原因を断ち切る役割として期待できるのではないでしょうか。
インディアンにハゲはいない?
「インディアにハゲはいない」という言葉を、単なる都市伝説だと感じている人も多いようです。しかし、実際の調査でもインディアンにはハゲが少なかったということがわかっています。当時、アメリカ人の薄毛の割合は39%だったのですが、ネイティブアメリカンの薄毛の割合は、わずかに1%だったといいます。
そして、ここまでの差が生まれた最大の秘密は、インディアンが滋養強壮のために食していたノコギリヤシに原因があったといわれています。「人種が違うからハゲなかっただけではないか」と思われるかもしれませんが、インディアンが都会に移り住み、都会的な食生活を始めると、途端に薄毛が進行しだしたというデータもあります。つまり、インディアンの食生活に薄毛を予防する秘訣があったという事は間違いないのです。そして研究の結果、ノコギリヤシに薄毛を止める効果があったということが明らかになったのです。
ノコギリヤシサプリの摂取量は?
ノコギリヤシのサプリメントは様々な会社が販売しています。中には、100円ショップで販売されているものもあります。販売会社によって、1粒あたりに含まれるノコギリヤシエキスの量は違います。そのため、何錠摂取するのが最も効果的であるという言い方はできないのですが、1日あたりのノコギリヤシの摂取量は320mg程度にするのがお勧めです。
なぜなら、ノコギリヤシは、日本ではサプリメントとして販売されていますが、ヨーロッパでは医薬品として使用されています。そして、ヨーロッパでの臨床試験の結果、効果が確認された量が320mgだったことから、その量を基準にすると良いと思われるためです。
ちなみに、どの薬局でも売っているDHCのサプリメントのシリーズにもノコギリヤシのサプリメントは存在しますが、これは1日2粒摂取することを推奨されています。そして2粒に含まれるノコギリヤシエキスの量は340mgです。効果が出るであろう分量をわずかに超える程度なので、過剰摂取にもならず、効果が期待できるのではないでしょうか。
2.亜鉛のサプリメント
亜鉛は人の体に必要不可欠なミネラル
亜鉛は、人間の体の中にわずか2gしか存在しない希少なミネラルです。しかし、その分量からは考えられないほど亜鉛の果たしている役割は人の体の中でも非常に大きいです。特に髪の毛にとっては、その存在を支えるほど大切な役割を果たしています。
亜鉛が人体にもたらす基本的な作用は、新陳代謝の活性化や、細胞分裂の促進、免疫力の効果.抗酸化作用、美肌作用などです。しかし、もちろんこれだけではありません。その他、育毛にとって重要な役割をするのが、「ケラチンたんぱく質」の構成と、「5αリダクターゼの抑制」の2点です。
ケラチンタンパク質の合成
人間の髪の毛は、その99%がタンパク質によって構成されています。しかしタンパク質というのは肉などを食べた時に、そのまま吸収されて人の体の中で使われるわけではありません。一度アミノ酸という小さな単位まで分解され、その後再構成されて体の中のしかるべき場所で使用されるのです。
髪の毛に使われているのは、ケ「ラチンたんぱく質」という種類のたんぱく質です。人の体は、タンパク質を摂取した際にそれを分解し、アミノ酸として血液の流れを利用して体全体に運びますが、その際に亜鉛はそれらのアミノ酸を組み合わせて、「ケラチンたんぱく質」を作り出す働きを助けます。要は、髪の毛の材料を増やしてくれるということです。どんなに髪の毛を増やそうと努力しても、新たな髪の毛になる材料がなければ、髪の毛は生えてきません。そういった意味で亜鉛は育毛にとって重要なのです。
5αリダクターゼの抑制
ノコギリヤシの説明をする項目で記載した通り、男性型脱毛症の原因はジヒドロテストステロンという悪玉ホルモンです。そして、その悪玉ホルモンは男性ホルモンであるテストステロンと、還元酵素である5αリダクターゼが結合することによって作られます。育毛の業界に革命を起こしたプロペシアという医薬品は、5αリダクターゼの活動を阻害するという役割を果たす薬品です。ノコギリヤシについても同じ効果でした。そして、実は亜鉛にも5αリダクターゼを抑制する作用があるのです。
プロペシアやノコギリヤシに比べれば、亜鉛の持つ5αリダクターゼの抑制作用は非常に小さな効果かもしれませんが、日常的に摂取する食品の中でそのような働きがある成分というのはほとんどありませんので、ぜひ積極的に摂取していきましょう。
亜鉛の摂取量は?
髪の毛の材料を作り、さらに薄毛の原因となる酵素の働きを抑えてくれる亜鉛ですが、1日にどれぐらいの量を摂取すればよいのでしょうか。厚生労働省の定める、「日本人の食事摂取基準2015年版」よると、亜鉛の推奨摂取量は、成人男性が1日に10mg、成人女性が1日に8mgです。
しかし、亜鉛は、日本人に不足しがちなミネラルの代表とされており、実際のところ成人男性が1日に摂取している亜鉛の平均は8.9mg、成人女性が摂取している亜鉛の平均は、1日7.2mg とされています。毎日約1割程度が不足しているのです。このたった1割の不足でも、毎日積み重なることによって、体の不調などの大きなトラブルへと発展してしまう可能性があります。亜鉛のサプリメントによって、効率よく摂取していきましょう。
ただし、亜鉛をサプリメントで摂取する場合、注意が必要なのが、その過剰摂取です。亜鉛の耐用上限量(過剰摂取にならない上限の量)は、成人男性で40~45mg、成人女性は35mgとされています。その量は、推奨摂取量の4倍以上ですので、普通に生活していれば、まず超えることはないのですが、サプリメントで摂取したりすると、牡蠣を大量に食べたりすると超えてしまうことがあります。
亜鉛の過剰摂取は、腹痛・吐き気・嘔吐・下痢・低血圧・胃障害・腎機能障害などを引き起こす可能性があります。さらに、1日に1000mg以上の亜鉛を摂取してしまうと、まれに「急性亜鉛中毒」という状態になってしまうことがあります。これは、一般的な体調不良と症状が似ているので気づきにくいのですが、症状が悪化すると、免疫機能の低下や、生殖機能の低下などを引き起こす可能性があります。亜鉛をサプリメントで摂取する場合は、過剰摂取にならないように気をつけましょう。
3.イソフラボンのサプリメント
イソフラボンは女性ホルモンと似ている?
大豆製品に豊富に含まれているイソフラボンは、エストロゲンという女性ホルモンと非常に似た働きをしてくれるということで知られています。これは、更年期の女性が多く悩む乳がんや子宮体癌などを予防する働きがあります。また、男性からしてもホルモンに関係する前立腺関係の病気に良い効果があるといわれています。
ホルモンに関連する医薬品は、副作用が強かったり、男性女性のうちのどちらかが使えなかったりするのですが、イソフラボンはどちらにも良い働きがあり、そして自然食品なので副作用もありません。そして、ホルモンに作用するということは、イソフラボンは髪の毛にも影響があるのです。
テストステロンの抑制
イソフラボンは、女性ホルモンと似た働きをするので、男性ホルモンを抑制し、ジヒドロテストステロンの発生を抑えてくれる働きがあります。今回の記事で何度も出てくる「ジヒドロテストステロン」という名前ですが、これは男性型脱毛症の原因の9割といわれている悪玉ホルモンで、男性ホルモンであるテストステロンと、5αリダクターゼという還元酵素が結びつくことによって生じる物質です。
ここまでに紹介してきたノコギリヤシと亜鉛は、5αリダクターゼを抑制することによってジヒドロテストステロンの生成を抑制するという働きでしたが、このイソフラボンは、男性ホルモンであるテストステロンの方を抑制することによってジヒドロテストステロンの生成を抑制するという働きです。
成長因子の生産促進
毛母細胞の細胞分裂を活性化させる、igf-1という成長因子があります。これは、CGRP という成分が元になって作られるのですが、イソフラボンは、このCGRPを増加させる作用があります。つまり、間接的に成長因子であるigf-1を増やすのに役立つということです。また、igf-1は成長ホルモンが分泌されているタイミングで多く生産されます。
そして、成長ホルモンが最も分泌されるのは夜の10時から深夜の2時という時間帯です。この時間に深い眠りについていると、成長ホルモンは大量に分泌されます。そのため、イソフラボンの効果を最大限に発揮したいのであれば、夜は早めに寝るのがお勧めです。
イソフラボンの摂取量
厚生労働省が公表しているイソフラボンの1日の推奨摂取量は、上限が75mgです。コップ一杯の豆乳と納豆一カップだけでもそのイソフラボンの量は超えてしまうので、毎日必要量を摂取することは、そこまで難しくないでしょう。しかし、大豆製品は人によって好き嫌いがあります。納豆が苦手な人や豆乳が苦手な人は多いのではないでしょうか。
そのためおすすめなのがサプリメントです。様々なメーカーが、イソフラボンの配合されたサプリメント発売しています。たとえば、ネイチャーメイドのラインナップの一つに、大豆イソフラボンのサプリメントがあります。これは1粒あたり23.6mgの大豆イソフラボンが含まれています。1日に3粒摂取することによって必要な量のイソフラボンをカバーすることができます。大豆製品が苦手な方で、効率よくイソフラボンを摂取したいのであれば、サプリメントがおすすめです。
イソフラボンとカプサイシンの同時摂取は間違い!?
イソフラボンの育毛効果について調べていくと、さまざまな書籍やサイトで、「イソフラボンとカプサイシンの同時摂取が効果的」ということが書いてあります。カプサイシンにはigf-1の生成を促進させる効果があるため、イソフラボンによって増加したCGRPをigf-1に変える量を増やすというものです。
これは某有名テレビ番組でも紹介された方法で、この効果をもとにした育毛剤も開発されて、30万本も売れたそうです。しかし、この効果を証明する元となった研究に、実は捏造があったということが発覚したのです。
この捏造のニュース自体はそこまで大きく取り上げられなかったため、このイソフラボンとカプサイシンの併用という育毛方法をいまだに信じている方が多いようですが、残念ながらこの併用に効果はありません。
ただ、捏造があったのはカプサイシンの研究の方ですので、イソフラボンのCGRP増加の効果については間違いがありませんし、なによりホルモンに働きかけるという作用に変わりは無いので、「カプサイシンとの併用をしても効果は変わらない」ということに注意しておけば問題はないでしょう。
サプリメントと一緒に育毛剤
サプリメントは、確かに髪の毛にとって良い働きがあります。今回紹介した3種類の成分は、そのどれもが男性型脱毛症の原因とされるジヒドロテストステロンの生成を抑制する働きを持っていました。そのため、薄毛を予防するには効果的なのですが、新しい髪の毛を生やすという発毛効果までは期待する事が難しいです。
そのため、ミノキシジルが配合された育毛剤を頭皮につけるなどの方法で、サプリメントと育毛剤を組み合わせて行くことで、より可能性の高い発毛が期待できるのではないでしょうか。また、本気で髪の毛を生やしていきたいのであれば、AGAクリニックに通院するのが最も確率の高い方法です。初回の相談は無料というところが多いので、悩んでいるのであれば、一度行ってみてはいかがでしょうか。