
20代や30代という若さで薄毛が気になりだしたか方は、その原因が毎日のスタイリングでつけているワックスにあるのではないかと考えているケースも多いと思います。
確かに、インターネットなどを見てみると「ワックスのつけすぎは抜け毛に繋がる」などといった記事もたくさん見つかります。特に、10代の若い頃から毎日ワックスをつけ続けてきたという方は、そのワックスの悪影響がどれだけ頭皮に蓄積されているのか不安になっているでしょう。
そこで今回は、ワックスをつけることが抜け毛につながるのかという根本的な部分を、抜け毛のメカニズムと照らし合わせて徹底的に検証していきます。この記事は、ワックスと抜け毛に関する世の中にある様々な記事の決定版といえる内容になっています。
ワックスが抜け毛につながるのか?
ワックスをつけることが抜け毛につながると考えている方はたくさんいますが、なぜワックスが抜け毛につながると考えてしまうのでしょうか?インターネット上で「ワックスをつけると薄毛になる」と書かれている記事などを参考にすると、
「ワックスをつけることにより髪の毛がダメージを受けてしまう」
「毛穴にバックスが詰まり、髪の毛が呼吸できなくなってしまう」
「ワックスの粘着力が空気中にただよっているゴミをくっつけてしまい、頭皮が不潔になる」
など、ワックスと抜け毛のつながりに関する様々な考察が見つかります。確かにこれらの意見は多くの男性が持っているワックスをつけることに対する不安とマッチしているかもしれません。
ワックスを使用している男性の中には、朝にシャンプーをするという人も多いようです。つまり、シャンプーをした直後、出かける前にワックスを使用して、帰宅してからワックスを洗い流さないまま寝てしまうのです。こうした生活をしている人にとっては、もしワックスが頭皮に悪影響を与えるのであれば、抜け毛が増えてしまわないか不安になってしまいますよね。
では、実際のところインターネットで言われている。これらの「ワックスと抜け毛のつながり」というものは正しいものなのでしょうか。
ワックスをつけてもAGAが進行することはない!
抜け毛に悩む男性の9割以上はAGA(男性型脱毛症)です。そして、この記事の本題であるワックスと抜け毛の関係性というポイントで言えば、ワックスをつけることによってAGAが進行したり、抜け毛が増えたりすることはありません。
つまり、「ワックスをつけすぎると抜け毛が増える」と書かれているインターネット上の記事は、正直なところあまり抜け毛に関する知識を持っていない方が書いた、参考にしないほうがいい内容です。
まず「ワックスをつけることによって髪の毛がダメージを受ける」という部分ですが、ワックスをつけるだけでは髪の毛がダメージを受けるということはありません。むしろワックスが髪の毛の表面を覆うので、髪の毛を保護しているとさえ言えます。
それなのに、なぜワックスをつけることで髪の毛がダメージを受けると考えられているのか不思議です。また、そもそもの問題ですが、髪の毛がダメージを受けたところでそれが抜け毛につながることはありません。
髪の毛というのは角化した毛母細胞、つまり死んだ細胞のことです。その部分がどんなにダメージを受けたところで、その信号は毛根に伝わることがありません。そのため、髪の毛がダメージを受けることによって切れ毛や枝毛が発生することはありますが、抜け毛につながるということはありえないのです。
また、「毛穴にワックスが詰まり、髪の毛が呼吸できなくなってしまう」という意見に対しても誤りがあります。というのも、そもそも髪の毛は呼吸をしません。ワックスが頭皮についたとしても人間は肺呼吸をする生き物なので呼吸に関しての問題は一切ありません。
この「髪の毛の呼吸」という言葉は、本来髪の毛に対してのスペシャリストである美容師さんもよく使う言葉なので、なぜこの考え方が普及しているのかが不思議です。また、呼吸は別としても頭皮に皮脂やワックスの残りなど何らかの物質が詰まることで抜け毛につながるという考えもありますが、これも正しくはありません。
AGAはそれよりももっと毛根の奥でホルモンの働きによって起こるものです。毛穴に皮脂が詰まっていると抜け毛が増えるというのは一昔前に育毛サロンがヘアチェックなどで話していた内容で、見込み客に申し込みをさせるための常套手段だったと考えられています。
AGAのメカニズムがはっきりしている現時点においては毛穴が詰まるという。抜け毛が増えるという考え方も古いものになっています。
まず、多くの男性に覚えておいていただきたいのが、AGAは外的な要因で引き起こされるものではなく、内的な要因で引き起こされるものであるということです。つまり、外側から何らかの刺激を受けてAGAが進行するということは100%ないのです。
AGAのメカニズムを簡単に説明すると、血液の中を流れているテストステロンという男性ホルモンが前頭部や頭頂部に存在する5αリダクターゼという酵素と結びつくことによって生まれるジヒドロテストステロンという男性ホルモンが原因になっています。
この悪玉ホルモンは毛乳頭細胞の核に移動する時、そこからTGFβという。脱毛促進因子を発生させます。この脱毛促進因子の働きによって、本来であれば3年から5年成長を続けるはずの髪の毛が、数ヶ月前で脱毛するようになってしまうのです。髪の毛が生まれてから抜け落ちるまでのサイクルをヘアサイクルと呼びますが、男性型脱毛症の方はこのホルモンの働きによってヘアサイクルの回転速度が異常に速くなっているのです。
ワックスをどれだけつけたとしても、それによって男性ホルモンの生産量が増えるわけではありませんし、ヘアサイクルを乱すわけでもありません。AGAの原因とワックスは全く無関係な場所に存在するのです。
ワックスは抜け毛と完全に無関係ではない?
ワックスとAGAは無関係であるということを説明しましたが、ワックスと抜け毛ということに関して言えば、完全に無関係というわけでもありません。
というのも、抜け毛の全てがAGAであるというわけではないからです。男性の抜け毛の9割以上はAGAによるものですが、その他にも円形脱毛症や牽引性脱毛症、薬物の使用による脱毛など、抜け毛が発生する理由は様々です。
そしてワックスを利用している人の中には、それが原因で炎症性の脱毛を引き起こしてしまう可能性があります。炎症性の脱毛とはその名前の通り、頭皮の一部分が何らかの理由で炎症起こし、炎症を起こしている部分の髪の毛が抜け毛を起こしてしまうという現象のことです。
では、何故ワックスを使用することによって炎症が起きてしまうのでしょうか。順を追って説明していきます。頭皮に限らず、人間の皮膚は「ターンオーバー」という細胞の入れ替わりを常に行っています。45日間という周期で人間の皮膚はすべての細胞が入れ替わります。
肌をこすった時に出てくる垢は、ターンオーバーによって不要になった細胞がまだ皮膚の上にこびり付いているものです。他の皮膚と同様に頭皮もこのターンオーバーを行っているのですが、ワックスが頭皮につくことによって、ターンオーバーで不必要になった皮膚細胞が剥がれ落ちず、頭皮にとどまり続ける形になります。
言い方を変えればこれは「フケがたまっている」という状態です。フケは、頭皮に住む常在菌であるマラセチア菌のエサになります。マラセチア菌は過剰繁殖しなければ、頭皮を紫外線や他の菌から守ってくれるバリアの役割を果たしてくれますが一定数以上に繁殖をすると炎症の原因となります。
つまり、ワックスをつけることによりフケがたまり、そのフケを餌としてマラセチア菌が繁殖し、炎症が起こるというメカニズムなのです。また、その他にもフケがたまって不潔な状態の髪の毛はかゆみを発生させるため、ついつい掻いてしまいます。
掻いたところの傷にマラセチア菌が入り込み、繁殖し炎症を起こすというケースもあります。しかし、炎症による脱毛症は、塩詳細な俺は再びその毛根から髪の毛は生えてきますので、一時的なものです。そこまで心配する必要ありません。
逆にAGAは一度進行すると自然に回復する事はありませんので治療薬を使用しなければなりません。そういった意味では、ワックスを使用することによって起こる炎症性の脱毛症はそこまで深刻に気にする必要がない種類の抜け毛であると言えます。
ワックスをきれいに落とす方法
ワックスがAGAへの直接の原因にはならないとはいえ、炎症による脱毛を引き起こしてしまう可能性があります。
また、抜け毛とつながるかどうかという部分を度外視しても、一度つけたワックスは綺麗に落とさないと気持ちが悪いですよね。そこでワックスをきれいに落とす正しいシャンプーの方法をお伝えしていきます。
ブラッシングをする
これは使用しているワックスがハードタイプであれば難しいかもしれませんが、ブラシが通る程度の柔らかいワックスを使用している場合は、シャンプーの前に乾いた状態でブラシをしてください。
先にブラシをしておくことで、髪の毛についた大きな汚れは取れ、ワックスによってくっついていた髪が、ほどかれるので髪の毛の表面積が増えてシャンプーをする際のお湯やシャンプー剤が髪の毛の内部まで浸透するようになります。
お湯を髪の毛になじませる
ぬるま湯のシャワーを髪の毛にかけて髪の毛全体をお湯になじませてください。お湯の温度は38度以下が望ましいです。お湯の温度が高すぎると、頭皮に必要な水分や油分も奪ってしまう可能性があるので、「少しヌルい」と思う程度の温度で十分です。
コンディショナーまたはリンスをつける
意外に思うかもしれませんが、ワックスをきれいに落としたいと考える場合、コンディショナーやリンスをシャンプーの前につけるのが効果的です。コンディショナーやリンスに使用されている合成界面活性剤は、水と油の境目をなくして溶かしてしまう役割があります。
つまり、ワックスを水に溶けやすい状態にして洗い流すのに最適だということです。コンディショナーやリンスを頭皮ではなくワックスがついている髪の毛の部分に塗り込んでよくもみ洗いしましょう。この状態ですすげば、ある程度のワックスは取れるはずです。
手のひらでシャンプーを泡立てる
次にいよいよシャンプーをしていきますが、シャンプー剤を直接頭皮につけてはいけません。最近は頭皮に優しい成分を使用したシャンプーも増えてきていますが、それでも、洗浄剤は頭皮にとっては刺激が強いものです。
人間の皮膚の中でも、頭皮は最も敏感な場所ですからお湯と混ぜてしっかりと泡立ててから髪の毛につけるようにしてください。先程、コンディショナーやリンスを使用したことによって、髪の毛についているワックスはある程度落ちたはずです。そのため、シャンプーをつけて行うことは主に頭皮の洗浄とこびりついたワックスの洗い流しです。
ゴシゴシと擦ったり、爪を立てたりしてしまうと頭皮に傷が入り、そこから炎症が起こってしまう可能性があるため、指の腹を使ってマッサージをするように頭皮を洗っていてください。
すすぎ
しっかりと頭皮を洗い流すことができたら次はすすぎです。ワックスを落とすということに関してはこのすすぎの時間を長くとることが大切になります。コンディショナーやシャンプーによって浮いたワックスをお湯の力できれいに流していきます。
下を向いて後頭部からシャワーをかける方が多くいますが、このやり方だと髪の毛の生え際にすすぎ残しが生まれてしまう可能性があるため、上を向いて顔の前からシャワーを当てるようにしましょう。
この段階でまだ髪の毛にワックスが付いている感じがしたら、再びシャンプーをするのではなく、もう一度、コンディショナーまたはリンスをつけて見てください。髪の毛に残った最後のワックスまで浮かせて落としてくれるはずです。
ドライヤーをあてる
シャワーが終わったらドライヤーを当てます。自然乾燥はよくありません。というのも、炎症を発生させる原因となるマラセチア菌は湿った場所を好むからです。
シャンプーのあと髪の毛が濡れた状態で自然乾燥させるとその間に菌が繁殖し炎症の原因になりかねません。髪の毛はドライヤーでしっかり乾かしてください。
まとめ
ワックスが抜け毛につながるのではないかと悩んでいた方は、この記事を読んで少し安心してもらえたのではないでしょうか。どんなにワックスをつけたとしても、AGA(男性型脱毛症)が進行することはありません。
昔からワックスをつけていて、突然抜け毛が増えたという方は、AGAが発症したタイミングが、たまたまその時だったというだけで、ワックスをつけていたということはほとんどの場合関係ありません。
一部ワックスをつけることによって炎症が起こり、その炎症が原因で抜け毛が生まれるということもありますが、炎症が治れば再びそこから髪の毛は生えてきますのでAGAと比べれば症状は軽いです。毛抜け毛を気にしてワックスを使わないという選択をしてきた方は、も気にせずに思い切りスタイリングを楽しみましょう。