ミノキシジルを使ったら抜け毛が増した?初期脱毛の基礎知識

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ミノキシジルは、男性型脱毛症の治療薬として非常に優れた効果を持つ発毛薬のひとつです。実際、日本皮膚科学会は、男性型脱毛症の診療ガイドラインにて、男性女性ともに、男性型脱毛症による脱毛部位の治療の第一選択として、ミノキシジル製剤を使用することを推奨しています。

ところが、そんな優れた効果を持つミノキシジルですが、いざ使ってみたら、抜け毛が増してくることがあります。脱毛症を治すために、発毛効果を期待して使っているのに、発毛するどころか、反対に抜け毛の進行が加速してしまったら、さぞ驚くことでしょう。

この場合は、ミノキシジルとの相性が悪いのでしょうか?これは副作用なのでしょうか? 誰しも、とても不安な気持ちに陥ってしまうのが、正直なところでしょう。

そこで、ミノキシジルを使い始めたところ起こりうる脱毛症状についてまとめてみました。

ミノキシジルってなに?

ミノキシジルは、脱毛症の治療薬として世界的に普及している発毛薬のひとつです。もちろん我が国でも製造販売されています。我が国では、大正製薬という製薬会社がその製造と販売を一手にになっています。名称はミノキシジルではなく、大正製薬ではリアップという名称で販売しています。

リアップは、現在5種類がシリーズ化されて販売されています。リアップX5プラス、リアップジェンヌ、リアップジェット、リアップ、リアッププラスです。このうち、リアップジェンヌは女性向けの製剤になっております。残る4種類は男性用です。

なお、海外ではリアップという名称では販売されていません。ミノキシジルの開発元の製薬企業では、Rogaine(ロゲイン)という名称で販売しています。それ以外に、カークランド、ポラリスなど、値段を抑えたジェネリック医薬品に該当する製品も販売されていますが、これらはすべて、日本国内では販売されていません。

驚くべきことに、このミノキシジルは、もともとは脱毛症の治療薬として開発された薬ではありません。高血圧症の治療薬として、血管を拡張させて血圧を下げる働きを期待して開発された薬剤です。使ってみたところ、副作用で毛髪の成長が増してくる現象が認められました。

そこで、発想を切り替えて、高血圧症の治療薬ではなく、脱毛症の治療薬として開発されることになりました。その結果は、とても優れたものでした。そして、世界的に脱毛症の治療薬の先駆者として知られるようになりました。

毛髪が生えてから抜けていくまでのサイクルについて

毛髪に関しては、生えてから抜けるまでの一定のサイクルがあることが知られています。これを毛周期といいます。

毛周期は成長期毛、中間期毛、休止期毛から構成されています。このうち成長期毛が9割弱とほとんどを占めています。

成長期は、さらに早期成長期・中期成長期・後期成長期の3期にわける考え方もあります。成長期というだけあって、この期間に毛髪はどんどん太くなり伸びて、成長していきます。成長期の期間は、正常であれば2年から6年といわれていますので、とても長期に及びます。

中間期は、退行期とよばれることもあります。中間期では毛髪の成長は終了しており、これ以上毛髪が伸びることはありません。毛髪の成長が終わり成熟した状態といった感じの時期です。中間期の期間は、2週間です。成長期と比べるとたいへん短い期間です。

そして、休止期は毛髪が抜け落ちる直前の状態です。抜けるのを待っている状態とも言えます。この段階に至った後、毛髪は抜けていきます。休止期の期間は、おおむね3から4ヶ月ですので、中間期よりは長いですが、成長期よりは短いです。

人間に例えれば、成長期は子ども、中間期は働き盛りの大人、休止期は高齢者といった感じでしょうか。
ちなみに、毛髪が抜けた後には、通常次に生えてくる毛髪が、すでに順番を待っています。休止期を経て抜け落ちた後は、この順番待ちをしている毛髪が新しく生えてきます。これを、延々と繰り返していきます。まさしく無限ループといった感じです。

なお、毛周期は、どの頭髪についても基本的に同じサイクルです。であるにもかかわらず、いっせいに脱毛期が来て、毛髪が存在しない期間が発生しないのは、毛周期の開始時点に時間差があるために、脱毛期が同時に重ならないようになっているからです。頭髪はモザイク状に脱毛するようになっているおかげで、通常は脱毛によって毛髪が消失することはありません。

男性型脱毛症における毛髪のサイクルについて

男性型脱毛症の場合は、毛髪のサイクルが正しく働いていないことが多いです。すなわち、毛髪の9割弱を占める成長期毛の段階に異常が起こります。

その異常とは、毛髪の成長が途中で終わってしまうというものです。そのために、毛髪そのものが、細いうえに、短い状態までにしか成長出来ません。

もちろん、成長が終われば、中間期に入り、休止期に至ります。中間期や休止期は、他の正常な毛髪と同じです。ところが、毛髪の大部分を占めている成長期が早期に終わってしまうために、毛髪のサイクル自体が短くなってしまいます。そして、細く弱いので抜けやすくもあります。その結果、毛髪が普通よりも早期に抜けてしまうようになり、脱毛症が起こってしまうのです。

では、男性型脱毛症の成長期毛の期間はどれくらいなのでしょうか?驚くべきことに、なんと数ヶ月から1年にも満たない期間といわれています。正常な成長期毛の期間が2から6年間ですから、実に数分の一でしかありません。だからといって中間期や休止期が長くなるわけではありません。このことからも毛髪にとって、成長するには時間が足りないだけでなく、毛髪のサイクルそのものが非常に短くなってしまうことがわかってもらえると思います。

ですので、抜け落ちた毛髪を見ると、か細いだけでなく短い毛髪であることが多いです。

ミノキシジルの初期脱毛って?

ミノキシジルを使い始めた頃に、発毛するどころか、逆に脱毛が進行してしまうことがあることが知られています。これを初期脱毛といいます。抜け毛の量が増えてしまうこともあり、ミノキシジルを使ったら、かえって脱毛範囲が広がったようにも受け止められることがあります。

ここで勘違いをしないでいただきたいのですが、初期脱毛は、ミノキシジルの効果がないがために起こる症状ではありません。髪の毛を増やそうと思って、高価なミノキシジル製剤を購入したのに、いざ使ってみたら、抜け毛がふえてしまった!というのは、さぞ受け入れがたいことでしょう。

しかし、この初期脱毛は、あくまでもミノキシジルの効果が現れた結果なのです。そこで使うのをやめてしまうと、元の木阿弥になってしまいます。

ミノキシジルの初期脱毛の症状について

初期脱毛だから大丈夫と聞いても、その量や期間等詳しいことがわからないことだらけだと不安になるばかりです。

まず、初期脱毛がおこる期間については、ミノキシジルを使い始めてから、おおむね1ヶ月前後から開始することが多いようです。そして、そのあと2から4週間前後は続くようです。ただし、この期間に関しては、個人差による影響を過分に受けるようです。使い始めて2週間目ほどから発現することもありますし、起こっていることにすら気がつかないこともあります。

初期脱毛が終わった後、ミノキシジルを使い続けている限り、初期脱毛が再発することはありません。

また、初期脱毛による抜け毛の量ですが、1日あたり数100本といわれています。ちなみに、男性型脱毛症でない場合の抜け毛の本数は、一日あたり100本以下が正常範囲といわれています。ですから、抜け毛の本数としてはかなりの増加とみなすことが出来ます。したがって、朝起きた時に枕にたくさんの毛髪がついていた!!、お風呂で髪を洗っていたら、今までなかったくらいに毛が抜けてきた!!などの症状が現れてくることも稀ではありません。しかし、初期脱毛があったかどうかわからないほどの、抜け毛の本数であることもあります。

初期脱毛の生じる期間や抜け毛の本数には、個人差が影響することがとても多く、その症状を一概に述べることは容易ではありません。けれども、見方を変えれば、1000本初期脱毛で抜けても、その後1000本以上の毛髪が生えてくれれば、一過性の損失で済むわけですから、問題ありません。

損をしてから得をとるというわけではないのでしょうが、あまり心配して悩みこまないようにしてください。

ミノキシジルで初期脱毛が起こる理由

ミノキシジルで初期脱毛が起こるメカニズムについては、まだはっきりと解明されているわけではありません。
したがって、ここにあげるメカニズムは、あくまでも初期脱毛がおこる仮説の一例です。

ミノキシジルは、もともとの由来が血管拡張作用による血圧を下げる効果を狙って開発されていた高血圧症治療薬であったことにより、発毛薬として販売されている現在においても、血管を拡張して血液の流れを良くする効果があります。

血液には、細胞に酸素や栄養を供給するという重要な働きがあります。血液の流れが良くなれば、もちろん血液の量も増えます。そして、それに伴い細胞に送られる酸素や栄養の量を増やすことにも繋がります。

毛髪を生み出すのは、皮膚にある毛母細胞とよばれる細胞です。もちろん、頭皮にもあります。ミノキシジルを塗りますと、頭皮にある毛母細胞の周囲の血管がミノキシジルの作用により拡張されます。これによって毛母細胞は血液から栄養や酸素を、それまで以上にたくさん受け取ることができるようになります。この結果、毛母細胞の働きが活性化されて、毛髪が生えてくると考えられています。これがミノキシジルの脱毛症に発毛効果がある理由です。

ところで、男性型脱毛症で問題となるのは、毛髪のサイクルで大切な時期である成長期にあたる毛髪が、成長しきらないうちに休止して抜け落ちてしまう点にあります。このような毛髪には、成長が終了するまでの段階で、その成長が止まってしまった影響で、毛髪そのものが細い、弱い、薄いという特徴があります。

ミノキシジルが毛母細胞に作用しますと、休止した後に生えてくる順番待ちの毛髪の発毛が促進されます。その結果、新しく成長してきた毛髪によって、成長途上で休止してしまった毛髪が、押し出されて抜けてしまうと考えられています。ですから、初期脱毛で急に抜けてくる毛髪は、細くてか弱い毛髪が大部分を占めています。
そして、新たには得てきた毛髪の成長サイクルは、正常化されています。こうして、脱毛症が次第に改善されていくのです。

ミノキシジルを使っていて初期脱毛が起こったら・・・

それは、ミノキシジルが効果を発揮していることの裏返しでもあります。心配するどころか、むしろ歓迎してもいいことなのです。初期脱毛を経て、初めて毛髪の成長サイクルが正常化されるからです。初期脱毛の期間は、元気な毛髪が生えてくるために必要な準備期間のようなものともいえます。

もちろん、そうはいっても抜け毛が増えるわけですから、どうしても気になってしまいます。その期間は、帽子をかぶったりしてすごしてもらうのがいいでしょう。カツラという選択肢もありますが、カツラは価格がとても高いので、帽子の方がいいと思われます。

まとめ

ミノキシジルを使い始めると、抜け毛の量が増えてくることがあります。これを初期脱毛といいます。初期脱毛は、あくまでも一過性の症状です。そして、初期脱毛が繰り返し起こることはありません。初期脱毛が現れたら、それはミノキシジルが発毛効果を発揮している結果とも考えられます。

ですから、初期脱毛の期間や量は人それぞれ異なりますが、ミノキシジルを使っていて抜け毛が増えてきたとしても、心配する必要はありません。初期脱毛の期間が過ぎれば、毛髪の量は、むしろ増えてきますし、新しく生えてきた毛髪は太くしっかりしたものになります。

ただ、その期間は1ヶ月前後に及ぶこともあります。その間の抜け毛の量は増しますので、脱毛症が一気に進行した様相を呈することもあります。一過性とはいえ気になってしまいます。ですので、この間は、帽子等を活用して隠すことをお勧めします。

そして、新しく元気な毛髪が生えてくるのを待つようにしてください。

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