
日本全国で薄毛に悩まされている男性は、およそ1200万人もいるとされています。アジアの中でも薄毛治療に積極的な日本人ですが、基本的には男性型脱毛症であることが多いようです。
治療法はさまざまですが、身体の中から改善するということであれば、東洋医学であるツボも効果的です。今回の記事では、薄毛の予防や改善効果の期待できるツボを紹介したいと思います。
ツボってなに?
薄毛の予防や改善に効果が期待できるツボを紹介する前に、そもそもツボとはどのようなものなのか、簡単に解説しておきたいと思います。
経穴のこと
東洋医学において、人間の生命活動は「気」「血(けつ)」「水(すい)」によって維持されていると考えられています。「血」に関しては、西洋医学と似たような考え方をしています。
ただ、「血」が栄養を運ぶという点については東洋医学も西洋額も同じですが、東洋医学の場合、酸素を運ぶという概念はないようです。
「水」は、身体の温度調節をおこなったり、汗や尿を排出したりといった代謝活動に関わるとされています。身体が冷えたりむくんだりするのは、「水」が滞っているからだと考えられています。
最後に「気」ですが、これが東洋医学独特の考え方です。東洋医学では身体をめぐる形のないエネルギーのことを気と呼んでおり、その通り道のことを経絡と呼んでいます。
気が身体をちゃんとめぐっていると五臓六腑は問題なく働くとされていますが、気が滞ってしまうと、身体になんらかの異常が現れると考えられています。その気が滞った場所のことを経穴=ツボと呼んでいるのです。
WHOも認定している
ツボや気の流れなどというと、なんとなく胡散臭く感じてしまう人もいるかもしれませんが、実は、ツボは2006年にWHO(世界保健機関)によって、361か所が認定されているという事実があるのです。
薄毛にツボ治療は効果がある?
まさかツボを刺激するだけでみるみる髪の毛が生えてくると思っている方はいらっしゃらないと思いますが、果たしてツボ治療は本当に効果があるのでしょうか。
実際にツボ治療をおこなっている鍼灸師の間でも意見はさまざまですし、西洋医学の医師からもいろんな意見が効かれています。では、肯定的な意見と否定的な意見を紹介しておきたいと思います。
肯定的な立場
ツボ治療に肯定的な立場からは、ツボ治療やお灸が6世紀の初頭から江戸時代まで代表的な治療法であり、明治期以降は軽視されているという意見があげられます。
また、西洋医学にはトリガーポイントといって、痛みのきっかけとなる場所があるという考え方があるのですが、そのトリガーポイントとツボの合致率が7割程度もあるという説もあります。
実際に、鍼灸で用いる鍼をツボに入れることで症状が改善している人もいるという事実もあります。
否定的な立場
ツボ治療に否定的な立場の代表的な考え方は、ツボには科学的な根拠がないということでしょう。例えば、ツボをとる際に、指の幅で計るという方法があります。
その際、親指の幅が一寸、人差し指から薬指までの幅が2寸、人差し指から小指までの幅が3寸となっています。科学者にはこれがまず理解できないのです。
人差し指から薬指までの幅の半分の親指って、どれだけ太いんでしょうか。また、人差し指から薬指までの幅に小指を加えるだけで、なぜ1寸も増えてしまうのでしょうか。
さらにいうなら、ツボをとるときには基本的に自分の指を使う必要があります。ただ、鍼灸治療の現場において、患者さんの指で計るなどといったことはあまり現実的ではありません。
つまり、ツボ治療は経験値に左右される幅がものすごく大きいということが言えるのです。このように述べると、「でもWHOで認められているんでしょ」と思われるかもしれません。
実際には、国によってツボの位置も数もさまざまだったので、WHOが統一に乗り出したというのが本当のところです。
実際に361個のツボにいわれるような効果があるのかは、これから検証が進んでいくこととなるのでしょう。
薄毛に効く7つのツボ!
ツボ治療に効果があるのかどうかに関しては、議論が尽きることがありませんが、ここからは薄毛の改善や予防効果が期待されるツボを、厳選して7つ紹介していきたいと思います。
風池(ふうち)
風池は後頭部にあるツボで、自律神経のバランスを整えるのに効果があるとされています。盆の窪から3cm程度のところ、左右2つあります。親指で内側に押すように刺激するとよいでしょう。
風池は頭痛やめまい、眼精疲労や肩こりに効果的なツボとされますが、それは、風池を刺激することによって脳への血液循環が改善されると考えられているからです。
頭部への血流が改善されれば、当然のことながら頭皮の栄養状態も改善されることになります。それによって薄毛予防の効果も期待できるという訳なのです。
百会(ひゃくえ)
百会は頭頂部にあるツボです。両耳を結ぶラインと、顔の中心部を通るラインが交差する場所にあります。両手で頭を覆うように抑え、指の腹で心地よく刺激するとよいでしょう。
百会を刺激すると、精神的なストレスが緩和するとされています。ストレスは万病の元などと言われますが、頭皮環境にも悪影響を与えてしまいます。
ストレス状態が続くと、血管が収縮して血液の循環が滞ってしまいます。特に、頭は心臓より上にあるので、重力に逆らって血液を上方に送る必要があります。
そのため、ストレス状態が続くと頭部への血流が滞るのです。血液は酸素と栄養を運んでいるため、ストレスによって酸欠、および栄養状態の低下がもたらされるのです。
ツボ治療は基本的に、緊張を緩和することを目的としています。百会に限らず、ツボは気持ちいい程度の力で刺激することを忘れないようにしましょう。
天柱(てんちゅう)
天柱は首と頭の境目にあるツボです。盆の窪の左右に2本の太い筋肉があると思いますが、その筋肉の両脇と髪の毛の境目のところに2つあるのが天柱のツボです。風池と同じく、両手の親指で内側に向かって刺激するとよいでしょう。
天柱にはストレスの緩和や肩コリの解消、眼精疲労の改善や肝臓の機能強化、自律神経のバランスを整える効果と並んで、薄毛の予防効果も期待できるとされています。
合谷(ごうこく)
合谷は東洋医学の世界で万能のツボと呼ばれるほど、さまざまな疾患に効果的なツボだとされています。場所は、手の親指と人差し指の付け根、ちょうど親指の骨と人差し指の骨が触れる所にあります。
合谷は361あるとされるツボの中で、もっとも脳に刺激が伝わりやすいツボとされており、精神安定効果や首、肩のコリを解消する効果、ニキビや吹き出物を改善する効果などが期待でいるとされています。
また、合谷には頭部の疾患によく効くとされています。頭痛を始め、難聴や耳鳴り、そして薄毛予防効果も期待できるということなのです。
合谷は反対の手の親指で、人差し指の骨に向かって押すとよいでしょう。押しすぎるとかなり痛いので、気持ちよい程度の刺激に留めるようにしましょう。
三陰交(さんいんこう)
三陰交は、うちくるぶしの頂点に小指を当て、手をそろえたときに人差し指があたっている場所のあるツボです。三陰交は血液循環を改善する代表的なツボとされています。
特に、女性の冷え症の改善に効果的なツボとされますが、西洋医学的にも足底筋という筋肉が走行しており、この筋肉が緊張することによって血液の循環が悪くなり、冷え症になる可能性が高くなると考えられています。
ふくらはぎは心臓から一番遠い場所にある大きな筋肉なので、三陰交のツボを刺激することで、心臓へと送り返される血液の流れがよくなり、全身の血行を促進する効果が期待できるという訳なのです。
気海(きかい)
気海はおへその下、指2本分のところにあるツボです。名前からしていかにも東洋医学のツボという感じですよね。気が滞ることで、さまざまな弊害が起こると考えられています。
西洋医学的にも、お腹が冷えることはさまざまな疾患の元と考えられています。排便障害はもとより、婦人科系の疾患の多くも、お腹の冷えが原因と考えられています。
気海のツボを刺激すると、基礎代謝を向上させ、自律神経のバランスを整える効果が得られるとされています。男性の場合は薄毛予防や前立腺の機能向上、滋養強壮効果も期待できるということです。
女性の場合は冷え症の改善や生理痛の緩和、生理不順や不妊症の改善、婦人科系の疾患の予防効果が期待できるということです。
湧泉(ゆうせん)
湧泉もいかにも東洋医学といった趣のある名前が付けられたツボです。泉が湧きだすように気力や元気が湧いてくるツボという訳です。もちろん、頭皮の健康にとっても重要なツボとなっています。
湧泉の場所は足の裏になります。土踏まずよりもちょっと上に行ったところ、足の指を曲げたときにシワがよりますが、左右のシワが交わるややくぼんだ場所にあたります。
手にある万能のツボが合谷なら、足にある万能のツボが湧泉だと言われるくらい、東洋医学的には合谷と並んで重要なツボだとされています。
湧泉には元気が湧いてくる効果のほか、生理痛や更年期障害の改善、おなかや腰の冷えの緩和、腎臓や膀胱の機能回復といった効果が期待できるということです。
ツボとあわせて生活習慣の見直しも!
今回は、薄毛の予防や改善効果の期待できるツボを7つ紹介しました。もちろん、これらのツボを刺激したからと言って、魔法のように髪の毛が生えてくる訳ではありません。
そもそも、東洋医学とは、その人が本来持っている力を呼び覚ますことを目的としています。ツボさえ刺激しておけば、あとはなにもしなくていいという訳ではありません。
せっかくツボ押しの習慣を手に入れたのであれば、それとあわせて生活習慣を見直したり、食習慣を改善したり、適度に身体を動かすなどして、頭皮環境を整えるように心がけましょう。