「薄毛が遺伝する」は本当?母方の祖父の頭髪が遺伝する!

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若い男性が薄毛に関して持つ疑問のひとつに「薄毛は遺伝するのか?」というものがあります。

たとえ現在髪の毛が生えていたとしても、親戚に薄毛が多かったり、父親が薄毛だったりした場合「将来自分も薄毛になってしまうのではないか」と思い、不安になってしまいます。

しかし、この「薄毛が遺伝する」という考え方には誤解があるようです。そこで、今回の記事では、本当に薄毛が遺伝するのかという部分から、もし遺伝するとすれば、どのように遺伝するのかという部分まで、薄毛のメカニズムから逆算して説明して行きます。

薄毛の遺伝は父親から?

多くの人は薄毛が父親から遺伝されると考えているようです。

しかし、結論から言えば薄毛になるかどうかの要素は、父親から遺伝されることはありません。そのため、父親が薄毛だからといって落ち込む必要はありません。しかし、「薄毛が遺伝する」という現象自体が間違った情報だというわけではありません。

人間の体はすべて遺伝子情報で出来ていますので、薄毛になるかどうかという部分もやはり遺伝子に左右されます。では父親ではないなら、どこから薄毛の遺伝子は引き継がれるのでしょうか。母親は女性ですから、ほとんおの人は薄毛になっていないはずです。

その結論を得るためには、まず薄毛のメカニズムについて考えてみなければいけません。

薄毛遺伝子とは何か

遺伝子の中のアンドロゲンレセプターの感受性を左右する部分が、その人の薄毛へのなりやすさを示してます。「アンドロゲンレセプターの感受性」といきなり言われても、ほとんどの人は意味がわからないと思います。そこでまずは、男性型脱毛症のメカニズムから説明していきます。

薄毛のメカニズム

世の中には様々な薄毛の原因とされる要素がありますが、男性型脱毛症に関して言えば、原因の9割はジヒドロテストステロンという悪玉ホルモンです。

睡眠不足や生活習慣、食生活、ストレスなどといった、一般的に「薄毛の原因である」とされているものはあまり強い影響を頭皮に与えることはありません。では、その原因となるジヒドロテストステロンは何故生まれるのでしょうか。ジヒドロテストステロンは男性ホルモンであるテストステロンが血液中を流れ、それらが毛根に流れ着きます。

すると毛根には2型5αリダクターゼという還元酵素が存在しており、この酵素とテストステロンが結びつくことによって、より強力な男性ホルモンであるジヒドロテストステロンが生成されるのです。
こうして生まれたジヒドロテストステロンは、毛根の中にあるアンドロゲンレセプターという男性ホルモン受容体に受け取られ、脱毛促進のシグナルを発生させる因子を作り出します。

本来髪の毛は、男性の場合、3年から5年成長を続けて、その後成長が止まって抜けるというサイクルが平均ですが、ジヒドロテストステロンによって脱毛促進因子が発生すると、残りの成長期間に関係なく、その髪の毛は抜けてしまいます。薄毛の人というのは、このように、新たな髪の毛が生えては抜け、生えては抜けを繰り返すことによって髪の毛がどんどん細くなり、毛根が小さくなっていきます。

最終的に、目には見えないほど細く小さな髪の毛しか生まれない頭皮環境になってしまうのです。

アンドロゲンレセプターの感受性

ここで重要になるのが、アンドロゲンレセプターの感受性です。ジヒドロテストステロンの元となるそもそもの男性ホルモン「テストステロン」は男性が体を作ったり、男性らしく積極的な考え方をしたりする作用があり、不足すると体に悪影響が出てしまいます。そのため、どんな人でも一定量は体内に存在しています。

5αリダクターゼに関しても同様です。つまり、ほとんどの男性がある程度のジヒドロテストステロンは体内で生成されているのです。それなのに20代で薄毛になる人もいれば、60代になっても髪の毛がフサフサしている人もいます。この違いが、アンドロゲンレセプターの感受性による違いなのです。

簡単に言えば、アンドロゲンレセプターの感受性が高いほどジヒドロテストステロンの影響を受けやすくなり、薄毛の進行スピードが早まります。逆にアンドロゲンレセプターの感受性が低いほどジヒドロテストステロンの影響を受けにくくなり、薄毛は進行しにくくなります。

その証拠に、薄毛が進行しにくいといわれる後頭部の毛髪を毛根ごと前頭部に移植する植毛施術を行った場合、髪の毛が定着した後はその髪の毛は男性型脱毛症の影響を受けずに生え続けます。これはなぜかというと、アンドロゲンレセプターは毛根の内部に存在するためです。後頭部のアンドロゲンレセプターはジヒドロテストステロンをキャッチしたとしても、脱毛を促進因子を発生させないように作られているから前頭部に移籍した後でもその影響を受けなかったのです。

同じようにジヒドロテストステロンを受け取ったとしても、その影響が出るか出ないかはアンドロゲンレセプターに大きく左右されるということが、この事例からもお分かりいただけるでしょう。そして、このアンドロゲンレセプターの感受性というのは、遺伝に大きく左右されます。これが「薄毛が遺伝する」ということなのです。

なぜアンドロゲンレセプターの感受性には差が生まれるのか

人間の遺伝子の中には、「アンドロゲンレセプター遺伝子」というものが存在します。このアンドロゲンレセプター遺伝子は、全員が同じ配列で作られているわけではなく、個人差があります。このアンドロゲンレセプター遺伝子をもとにアンドロゲンレセプターが生成されるため、その発現効率に個人差が生まれます。

「アンドロゲンレセプターの感受性」という表現をしていますが、実際のところは「アンドロゲンレセプターの数」なのです。

薄毛が進行しやすい人のアンドロゲンレセプター遺伝子の配列は、アンドロゲンレセプター自体の剛性効率が良く作られているため、たくさんのアンドロゲンレセプターが生成されます。しかし薄毛が進行しにくい人のアンドロゲンレセプター遺伝子の配列は、アンドロゲンレセプター自体の合成効率が悪く作られているためアンドロゲンレセプター自体の数が少ないのです。

すると同じ数のジヒドロテストステロンが生成されたとしても、それを受け取る側のアンドロゲンレセプターの数が少ないため、頭髪に大きな影響が出ないのです。

薄毛遺伝子はX 染色体上に存在する

このアンドロゲンレセプター遺伝子こそが、薄毛を促進させる遺伝子です。そしてこれはX 染色体上に存在しています。人間は2種類の染色体で遺伝子が構成されており、女性はX 染色体とX 染色体の2つが組み合わさって作られています。男性はX 染色体とY 染色体の2つが組み合わされて遺伝子が作られています。

このとき生まれる子供は、女性であれば母親のX 染色体と父親のX 染色体を受け継いで2つのX 染色体から遺伝子が構成されます。生まれる子供が男性の場合は、母親からX 染色体を受け継ぎ、父親からY 染色体を受け継ぎ作られます。

ということは、生まれてくる子供が男性であった場合、その子供が持っているX 染色体は必ず母親のものであるということになります。そしてこのX 染色体に薄毛になるかどうかを大きく左右するアンドロゲンレセプター遺伝子が含まれるため、薄毛は母方からの遺伝ということになるのです。

しかし、当然のことながら母親は女性ですから、アンドロゲンレセプターの感受性が高かったとしても男性型脱毛症になることはありません。
ではさらに過去をたどっていくとどうでしょうか。母親の持っている2つのX 染色体のうち、ひとつは母親から、もう一つは父親から受け継がれます。そして、父親のX 染色体というのは、アンドロゲンレセプター遺伝子が含まれていますので、感受性が高ければ薄毛になっているでしょうし、感受性が低ければ薄毛になっていないでしょう。

このように考えていくと、遺伝学的に母方の祖父が薄毛であればその孫の男性は薄毛になる可能性が高いということが言えます。

遺伝だからといって諦める必要はない

こうした遺伝的な薄毛のメカニズムを説明すると、「母方の祖父が薄毛」に該当する人の中にはその説明を聞いて「自分が薄毛になるのは仕方がないことだ」とあきらめてしまう人もいます。

確かに、遺伝という言葉を聞くと身長の高さであったり肌の色であったり声の特徴であったり、後天的に矯正して変えることができないものというイメージがあるのは確かです。

しかし、薄毛に関しては解決策がもうすでに開発されています。それは、フィナステリドという成分です。2005年に日本で処方せん医薬品として発売され、AGAクリニックが設立されるきっかけともなった育毛成分であり、AGAクリニックでは「プロペシア」という医薬品に含有されて処方されています。

現在では、そのプロペシアのジェネリック医薬品として様々な種類のフィナステリドが配合された医薬品が販売されているので、個人輸入を使えば安く手に入れる事も可能です。

このフィナステリドは、その分子構造が非常にテストステロンと似ているという特徴があります。そのため5αリダクターゼが血液中を流れるフィナステリドの分子をテストステロンだと勘違いして結合してしまうのです。すると本来であれば生成されるはずだったジヒドロテストステロンが生成されず、毛根で脱毛促進因子が発生しなくなります。それによって髪の毛は本来の成長期間である3年から5年という成長サイクルに戻ることができるのです。

フィナステリドが開発されたことによって、遺伝学上は完全に薄毛になるはずの方でもその薬を飲み続けることで男性型脱毛症の進行を抑制し本来あるはずの髪の毛を自然に林てる状態に保てます。2016年にはフィナステリドの効果をさらに強くした。デュタステリドという成分も日本国内で承認され、遺伝的な薄毛を医学の力で改善する材料が整っていると言えます。

まとめ

薄毛が遺伝するというのは、単なる都市伝説ではなく、事実です。

しかし、多くの人が考えるような、父親からの遺伝ではなく母方の家系からの遺伝になります。そのため、もし自分が将来的に薄毛になってしまうのではないかと不安に思っている方は、母方の祖父の頭髪の状態を確認してください。そしてもし母方の祖母が薄毛だったのであれば、あなたにも薄毛になりやすいアンドロゲンレセプター遺伝子が組み込まれている可能性が高いです。

ただ、諦めてはいけません。現在はフィナステリドやデュタステリドと言った薄毛の進行を強制的にストップさせる薬品が開発されています。これらの薬品を内服することによって、薄毛の進行を止めることが可能です。あわせてミノキシジルなどの育毛剤を塗布することで、髪の毛を成長させて薄毛を予防することができるのです。

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